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日産自動車は、炭素繊維強化樹脂(CFRP)製部品の量産技術を開発した。同社は既にCFRP製のルーフやフロントフードなどを、高級スポーツ車など一部の車種に採用している。量産技術の開発によってCFRP製部品のコスト低減が可能になり、量産車への適用に道が開けた。日産が開発した量産技術の詳細と、量産車への今後の適用計画などを探る。

中央右の写真は部品の解析作業、下の写真は成形用金型
中央右の写真は部品の解析作業、下の写真は成形用金型
(写真:日産自動車)

 厳しくなる世界の燃費規制に対応するため、自動車メーカー各社は車両の電動化を加速させている。日産も電気自動車(EV)やシリーズハイブリッド機構「e-POWER」搭載車の販売を増やすことなどで、新車からの二酸化炭素(CO2)排出量を22年度までに00年度比で40%削減、50年度までに同90%削減する目標を掲げる。

 ただ、クルマの電動化を進めると、車両は重くなる傾向にある。例えばEVでは航続距離を伸ばすために、大きくて重いリチウムイオン電池パックを積まなければならない。

 全固体電池といった小型で大容量化が可能な新型電池の開発は世界規模で進むが、新型電池が実用化されてもクルマが重くなることに変わりはない。自動ブレーキなどの先進運転支援システム(ADAS)の搭載もクルマを重くする(図1)。

図1 電動化と車両質量の関係
図1 電動化と車両質量の関係
エンジン車の規制対応や電動化によってクルマの質量は重くなる方向にあり、さらなる軽量化が必要になる。(出所:日産自動車)
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 e-POWER搭載車については燃費性能を高めるため、エンジンの熱効率の改善やハイブリッド機構の改良(減速エネルギーの回生効率の向上など)を進めている。ただ、エンジンの熱効率や減速エネルギーの回生効率などには限界値がある。

 またEVと同様にADASなどの搭載によって、車両質量は重くなる傾向にある。電動パワートレーンの改良だけでは、世界の燃費規制に対応するのが難しくなっている注1)

注1)燃費規制が厳しい欧州では、域内で販売する新車のCO2排出量が21年に、平均95g/km以下に規制される。25年や30年には、規制がさらに厳しくなる。25年には21年比で約15%の削減、30年には同37.5%の削減が求められる見通し。達成できなければ巨額の罰金が科せられる。

軽量化の重要性を見直す時期が来た

 「ボディー軽量化の重要性を見直す時期が来た」。日産副社長の坂本秀行氏は、20年9月に開催したCFRP製部品の量産技術に関する説明会でこのように述べ、世界の燃費規制に対応するため、量産車のボディーにCFRP製部品を適用するとした(図2)。

図2 日産自動車副社長の坂本秀行氏
図2 日産自動車副社長の坂本秀行氏
「世界の燃費規制に対応するため、ボディー軽量化の重要性を見直す時期が来た」という。(出所:日産自動車)
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 CFRPには大きく分けて、マトリックス(母材)樹脂にエポキシ系樹脂などを使う熱硬化性CFRPと、母材樹脂にポリアミド(PA)樹脂などを使う熱可塑性CFRP(CFRTP)がある。ボディーへの採用では熱硬化性CFRPが先⾏しており、日産は従来同様、今回も同CFRPを使う。

 同社はこれまで、「GT-R NISMO」など一部の高級車のボディーに熱硬化性CFRP製部品を採用してきた(図3)。量産車については「鉄を使い切る」ことを基本にしてきたが、今後は熱硬化性CFRP製部品の採用車種を量産車に広げる。

図3 高級スポーツ車の「GT-R NISMO」
図3 高級スポーツ車の「GT-R NISMO」
2020年モデル。フロントフードやルーフ、フェンダーなどに熱硬化性CFRPを使う。日産自動車の資料を基に日経Automotiveが作成。
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 同CFRP製部品は、鉄製部品に比べて約50%の軽量化が可能だ。中でも大型車は小中型車より車両自体が重いため、同CFRPを使うことによる軽量化効果は大きい。

 坂本氏は、「24~25年に発売する大型SUV(多目的スポーツ車)などの電動車両への適用を計画している」と明かす。センターピラーやフロントピラー、センタートンネルなど複雑形状の大型部品に熱硬化性CFRPを適用し、高張力鋼板やアルミニウム(AI)合金などと組み合わせた異種材料構成(マルチマテリアル)ボディーとする計画である(図4)。

図4 試作したCFRP製ボディー部品
図4 試作したCFRP製ボディー部品
左からセンタートンネル、フロントピラー、センターピラーの試作品。(出所:日産自動車)
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