
ダイハツ工業は、SUV(多目的スポーツ車)タイプの新型軽自動車「タフト」に、ガラス製ルーフを標準搭載した。明るくて開放感のある車内や、広い前方視界を実現するのが狙いである。ただ、ガラス製ルーフは鋼板製ルーフよりコストが増える。200万円を切る低価格の車両に、ガラス製ルーフを標準搭載するのは珍しい。また、ルーフにガラスを採用するためには、鋼板製のルーフと同等の衝突安全性などを確保する必要もある。ダイハツはどのようにして、これらの壁を乗り越えたのか。同社の取り組みを追う。
新型タフト(図1)が属する軽SUV市場では現在、スズキの「ハスラー」が一人勝ちの状態にある。2019年度(19年4月~20年3月)の同車の販売台数は6万2831台。新型コロナウイルスの影響を受けながら、20年4月以降も堅調な販売が続く。
一方、新型タフト(以下、新型車)が登場するまでダイハツのSUVタイプの軽自動車には、「キャストアクティバ」があった。15年9月に発売した同車は背高タイプの軽ワゴン「ムーヴ」をベースに開発した車両で、上級感のある「同スタイル」と、走行性能を高めた「同スポーツ」(発売は15年10月)を合わせた3タイプを同時期に投入した(図2)。
ただ、これらの3タイプを合わせても、19年度の販売台数は3万5010台にとどまり、ハスラーに大差を付けられている注1)。同アクティバと同スポーツの生産は20年3月に終了し、現在は同スタイルだけを販売する。
新型車を武器に軽SUV市場で巻き返し
こうした状況の中で、ダイハツは20年6月に今回の新型車を発売した。同社の車両開発手法「DNGA(Daihatsu New Global Architecture)」を適用した新型車を武器に、軽SUV市場で巻き返しを狙う。
新型車の開発コンセプトの骨子は、日常からレジャーまで幅広い用途で使える“相棒"というものである。それを具体化する1つの対策として、ガラス製ルーフを全車に標準搭載した。前席上部のルーフがガラス製だ。
同車の開発責任者を務めたダイハツ技術統括本部製品企画部でチーフエンジニアの小村明紀氏は、「非日常や行動半径の広がりを日常でも感じてもらえるように、ユニークなパッケージングとして企画・開発した」と言う。