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写真:マツダ
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マツダは2020年10月、小型SUV(多目的スポーツ車)の新型「MX-30」を日本で発売した。同社の小型車向け新プラットフォーム「スモール」を適用した第3弾の車両で、今回発売したのは簡易ハイブリッド車(MHEV)である。電気自動車(EV)は、21年1月に日本で発売する。電動専用車として開発した同車は安全性能を高め、トヨタ自動車や日産自動車、ホンダなどの競合車を追い上げる。また、持続可能で環境負荷の低減に寄与する新素材を内装材に使用した。

 マツダの新型「MX-30」(以下、新型車)は、観音開き(中央開閉式)ドアを採用し、センターピラーレスでも側面衝突に対応できるようにした。ドアの開度は前部ドアが82度、後部ドアは80度と広い。乗員の乗り降りや荷物の積み下ろしをしやすくしたほか、ベビーカーや車いすの使用者にも配慮した使い勝手の良さを実現するのが狙いである(図1)。

図1 小型SUVの新型「MX-30」
図1 小型SUVの新型「MX-30」
20年10月に日本で発売したMHEV。乗員の乗り降りや荷物の積み下ろしをしやすくするほか、ベビーカーや車椅子の使用者も使いやすいように、観音開きのドアを採用した。(撮影:日経Automotive)
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 「新しい価値を提供するという新型車の開発コンセプトを実現するため、観音開きドアは優先順位が最も高かった」─。マツダ車両開発本部車両開発推進部で副主査を務める森谷直樹氏は、新型車に観音開きドアを採用した理由をこのように語る。

 ただ、片開きドアの通常の車両では、側面衝突の衝撃荷重を主にセンターピラーで受け止める構造になっている。これに対して、観音開きドアではセンターピラーがなくなるため、このままでは世界の側面衝突基準への対応が難しくなる。

2つの対策でセンターピラーレスに対応

 この課題を解決するため新型車では、(1)ドアの上下方向のフレームをセンターピラーの代わりに使う、(2)高張力鋼板を多用することなどで、ドア開口部のボディー骨格強度を高める─という対策を施した。これにより、「米国や欧州の自動車アセスメントの側面衝突の基準に対応できた」(森谷氏)という。

 前者の対策では、後部ドアの垂直方向のフレーム部(前部ドアの垂直方向のフレームと接する部分)に、「バーティカルレイン」と呼ぶ補強材を追加した。引っ張り強さが1.5GPa級のホットスタンプ(高張力鋼板の熱間プレス材)製である。

 この補強材で側面衝突の衝撃荷重を受け止め、ドアのロック機構部品やヒンジ(ドアをボディーに固定する部品)などを介して、衝撃荷重をドア開口部の骨格に逃がす。

 ただ、ロック機構部品やヒンジの構造上、部品自体の荷重の伝達効率を高めるのは難しい。また側面衝突では相対的に、ドアの下部が相手車両との衝突位置になる。

 そのため、補強材の形状を工夫して、衝撃荷重を補強材自体で吸収しやすくした。具体的には、補強材の下部の幅を上部より広くした。「下部の幅は上部よりも1.3倍以上広い」(森谷氏)という。補強材は、マツダ系部品メーカーのヒロテックと共同開発した(図2)。

図2 後部ドアに配置した補強材
図2 後部ドアに配置した補強材
センターピラーの役割を代替することで、側面衝突に対応する。衝撃荷重を補強材自体で吸収しやすくするため、上部よりも下部の幅を広くした。(出所:マツダ)
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