次世代車の“頭脳”ともいえる統合ECU(電子制御ユニット)を巡り、半導体メーカーの競争が激化している。セントラルゲートウエイ向けの車載SoC(System on Chip)でルネサスエレクトロニクスに先を越されたオランダNXP Semiconductors(NXPセミコンダクターズ)は、独自のアクセラレーターを搭載した新製品で巻き返しを狙う。対するルネサスは高速・低電力のAI(人工知能)回路技術を強みにシェア拡大を目指す。車載プロセッサーで2強といわれる両社の競争によって、統合ECUの進化が加速しそうだ。
「2022年以降のトレンドの1つが、セントラルゲートウエイにボディー系のドメインECU(電子制御ユニット)を取り込む動きだ」。オランダNXP Semiconductors(NXPセミコンダクターズ)の日本法人であるNXPジャパン 第一事業本部 マーケティング統括部 車載マイクロコントローラ部 部長の山本尚氏はクルマの電気/電子(E/E)アーキテクチャーの進化をこう説明する(図1)。
先行事例として、ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)の電気自動車(EV)「ID.3」がある。ID.3が搭載する統合ECUの1つ「ICAS1(In-Car Application Server 1)」は、セントラルゲートウエイとボディー系ドメインECUの両方の機能を持つ。ただ、ICAS1は心臓部となる車載SoC(System on Chip)にルネサスエレクトロニクスの「R-Car M3」を採用した。NXPにとってはルネサスに先を越された格好だ。
NXPとルネサスは車載プロセッサー市場では2強である(図2)。今回ルネサスの車載SoCがID.3に採用された背景として、複数の業界関係者がNXPの車載SoC開発の遅れを指摘している注1)。16年に米Qualcomm(クアルコム)がNXPの買収に乗り出したものの、米中貿易摩擦を背景に中国の規制当局による承認が得られず、18年に買収を断念した。「この影響でNXPの車載SoC開発が遅れた可能性がある」(業界関係者)という。