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 世代ごとにシステムコストを半減する─。トヨタ自動車はハイブリッド車(HEV)で課してきた鉄の掟(おきて)を、燃料電池車(FCV)にも適用した。1997年発売の初代「プリウス」以降、トヨタは約20年の間にハイブリッドシステムを第4世代まで進化させてコストを劇的に低減。こうして同社の主軸に成長したHEVのように、FCVも成長軌道を走れるだろうか。

 「初代と比べると、半減以上に進められた」。燃料電池(FC)システムのコストを2分の1にするという目標を達成したことを明かしたのは、2020年12月にトヨタ自動車が発売した燃料電池車(FCV)の新型「MIRAI(ミライ)」で開発責任者を務めた田中義和氏(Mid-size Vehicle Companyチーフエンジニア)である(図1)。

図1 トヨタ自動車の新型FCV「MIRAI(ミライ)」
図1 トヨタ自動車の新型FCV「MIRAI(ミライ)」
6年ぶりに全面改良した2代目。航続距離はWLTCモードで約850km(Gグレードの場合、Zグレードは約750km)となり、先代車より30%向上した。(出所:トヨタ自動車)
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 14年に発売した初代そして今回と2代続けてミライの開発責任者を務めた田中氏は、新型車に込めた思いをこう語る。「ミライは水素が将来のエネルギー源であることを広く認識してもらうためのシンボル。HEVはすっかりなじみの技術になった。トヨタは電気自動車(EV)にも取り組んでおりFCV一本足打法ではないが、このクルマが担う役割は大きい」。

 FCVの普及、そして水素社会に向けた重要なステップとしてトヨタが位置付けた新型ミライ。商用車や鉄道、船舶など幅広い用途に転用できるようにFCシステムのコストを低減しつつ、クルマ単体としての魅力を高めることを目指して開発した。