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“有り物”のHEV部品を積極流用

 FCシステムを初代比で半減させるためにトヨタが取った方策は2つ。(1)HEV部品の積極流用、(2)FCV専用部品の生産性向上─である。

 トヨタの基本方針は「HEVで培ってきた“有り物”の技術や部品を賢く使うこと」(同社Mid-size Vehicle Company MS製品企画ZS主査の清水竜太郎氏)だ。発電を担うFCスタックや水素タンク、FC昇圧コンバーターを除く多くの主要部品はHEVからの流用である(図2)。

図2 新型ミライの部品構成
図2 新型ミライの部品構成
リチウムイオン電池や駆動用モーター、パワー・コントロール・ユニット(PCU)など多くの部品はトヨタのHEVと共用する。プラットフォームはトヨタのFR(前部エンジン後輪駆動)車向けの「GA-L」で、「クラウン」や「レクサスLS」などと同じである。(出所:トヨタ自動車)
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 発電した電力を蓄えるリチウムイオン電池は「レクサスLS」のHEVと共用する。後輪側に配置した駆動用モーターは、「トヨタのFR(前部エンジン・後輪駆動)のHEVと同じものを使っている」(同氏)という(図3)。パワー・コントロール・ユニット(PCU)もHEVで広く使っているものだ。

図3 新型ミライの駆動用モーター
図3 新型ミライの駆動用モーター
トヨタのFR系HEVに採用されているモーター「MG2」を使う。(出所:トヨタ自動車)
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 HEVはFCVと電圧が異なるため、そのままでは部品を流用できない。そこでトヨタは、FCスタックとPCUの間にFC昇圧コンバーターを配置した(図4)。FCスタックで発電した電力の電圧をFC昇圧コンバーターでハイブリッドシステムの650Vに昇圧する。FCシステムの電圧に合わせた専用のモーターやPCUを開発・調達するよりも、FC昇圧コンバーターを追加したほうが安く済む。

図4 FCスタックと一体化したFC昇圧コンバーター
図4 FCスタックと一体化したFC昇圧コンバーター
スタックで発電した電力を650Vに昇圧する。SiC(炭化ケイ素)のパワー半導体素子を採用した。Si(シリコン)系パワー半導体を使う従来品と比較すると、約30%の小型化と約70%の電力損失低減を実現したという。(出所:トヨタ自動車)
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 FCV専用部品の生産性向上に関しては、FCスタックと水素タンクの構造を見直し、生産のサイクルタイムを大幅に短縮した。FCVのコスト低減では、触媒として使われる白金(Pt)に注目が集まりがちだが、「Ptの使用量削減で下がるコストよりも、量産規模の拡大によって低減できるコストのほうがはるかに大きい」(田中氏)という。

 生産性の向上を目指した開発の背景にあるのは初代ミライの反省だ。田中氏は「初代はとんでもなく台数を造れなかった。能力増強を実施しても年産3000台がやっとだった」と振り返る。トヨタは新型ミライの投入に合わせてFCVの生産能力を10倍に増強した。年産3万台の実現に向けて、主要部品の設計を変更した。