日立Astemo(アステモ、東京・千代田)が車載ソフトウエアの開発体制を変革している。これまでの人手によるウオーターフォール型の開発から、ITツールを駆使したアジャイル型に変える。対象は電動化部品やADAS(先進運転支援システム)など、9つの事業領域に及ぶ。製品への適用を進めており、2023年の量産を目指す。
自動車業界ではソフトウエア開発力の強化に向けて、IT分野の技術や文化を取り入れる動きが加速している。ただ、それらの多くは「本体組織から切り離した別組織で進めることが多い」と日立Astemo(アステモ、東京・千代田)ソフトウェア事業部シニアチーフエンジニアの中村智明氏は指摘する(図1)。「本体で大規模な変革を進めると、既存のビジネスを壊しかねない。このため、別組織で試験的に導入し、将来的に本体に戻すというやり方が多い」(同氏)という。
これに対し、同社は「本体のビジネスを対象に変革プロジェクトを進めてきた」(同氏)。2019~21年度の3カ年計画で進めており、ソフトの開発コストを大幅に削減することを目指す。「10%、20%といった削減ではない。具体的には言えないが、通常の改善活動では達成できない量の削減を目指している」(同氏)。
同社は日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業の統合会社として21年1月に設立した。電動化や自動運転/ADAS(先進運転支援システム)など、幅広いビジネスユニット(BU)を抱える。各BUのソフト開発を横串で支援し、変革の中心的な役割を担うのが、中村氏が所属する「ソフトウェア事業部」である(図2)。
同事業部は、「ソフトウェア技術部」「同設計部」「同検証部」から成る。技術部では「Automotive SPICE(A-SPICE)」などの各種標準に準拠した開発プロセスやツールを整備する。設計部は実際にソフトを設計し、プロジェクトを回す。検証部は要求仕様に対して品質が担保されているかを確認する。