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トヨタ自動車が車載カメラの調達方針を転換した。これまではデンソーの製品を採用してきたが、新たにドイツZFの前方監視用カメラを採用する。内蔵する画像処理チップは、トヨタがこれまで距離を置いてきたイスラエルMobileye(モービルアイ)製だ。

写真:ZF
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 トヨタ自動車が、イスラエルMobileye(モービルアイ)の画像処理チップを搭載した車載カメラの採用に踏み切る。ドイツZFが前方監視用のカメラとして仕上げ、ZFのミリ波レーダーと共にトヨタに供給する。モービルアイとZFの先進運転支援システム(ADAS)関連部品がトヨタに採用されるのは今回が初めてだ。「数年以内」(モービルアイ)に搭載が始まるという。

 モービルアイのチップは、画像認識のアルゴリズムやソフトウエアを自動車メーカーが変更できない「ブラックボックス」として提供される。トヨタは「技術を手の内化できないモービルアイとは距離を置いてきた」(ある自動車メーカーの自動運転技術者)が、その姿勢を転換したようだ。

日本の大手3社はそろってモービルアイ製に

 モービルアイの画像処理チップ「EyeQ」シリーズは、2020年時点で「世界28社の自動車メーカーに採用されている」(同社)という。市販車としてレベル3(アイズオフ)の自動運転機能を世界で初めて実用化したホンダの新型セダン「LEGEND Hybrid EX・Honda SENSING Elite」(レジェンド)や“手放し運転"を可能にした日産自動車の「スカイライン」をはじめ、多くの日本車にも搭載済みだ。

 トヨタの採用によって、日本の大手自動車メーカー3社はそろってモービルアイの画像処理チップを使うことになる(図1)。トヨタはこれまで、デンソーのカメラやミリ波レーダーを採用してきた。カメラに内蔵する画像処理チップは東芝デバイス&ストレージ製。

図1 日本の大手3社がそろってモービルアイ採用へ
図1 日本の大手3社がそろってモービルアイ採用へ
レベル3の自動運転機能を実用化したホンダ「レジェンド」や“手放し運転”を可能にした日産「スカイライン」などはモービルアイの「EyeQ4」を内蔵する前方監視用カメラを採用済み。これに続く形でトヨタも採用に踏み切った。(出所:ホンダ、モービルアイ、日産自動車)
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 トヨタが方針転換した理由の1つが東芝にある。東芝は20年9月、画像処理チップ「Visconti」シリーズの開発中止を発表した。方針に変更がなければ、現在サンプル出荷中の「Visconti 5」が最終世代となる。

 困ったのが、Viscontiを採用するデンソーであり、そのカメラを調達するトヨタだった。モービルアイとは距離を置いてきたトヨタだったが、Viscontiの進化が見込めなくなった状況では方針を転換せざるを得なかった。