トヨタ自動車は2021年10月末、開発中の電気自動車(EV)「bZ4X」の詳細を公表した。同社のEV向け車両開発手法「e-TNGA」の考え方に基づくEV専用プラットフォーム(PF)を初めて採用する。冬場に航続距離が激減するというEVの課題を克服するため、新しい暖房技術を開発した。
専用PFを用いたEVはドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン)などの競合が既に投入し始めている。国内メーカーのEVでは、日産自動車の「アリア」が先に量産を開始する。
トヨタは25年までにEV製品群「bZ」シリーズから7車種を投入する計画。第1弾となる中型SUV(多目的スポーツ車)のbZ4Xは、22年半ばから中国、欧州、米国、日本などの世界各地で発売していく(図1、2)。
bZの名称は「beyond Zero(ゼロを超えた価値)」を意味する。そのうちbZ4Xは、数字が車両の大きさで、4はbZシリーズの真ん中付近の大きさという。Xは、車両の種類がSUVであることを示す。
e-TNGAに基づくEV専用PFは、SUBARU(スバル)と共同開発したもの(別掲記事参照)。電池容量を抑えたことで電池を車両の中央下部に平置きし、重心を低くした(図3)。EVでは「いたずらに大きな容量の電池を搭載すると、電池の配置が“2階建て”になる」(トヨタ自動車トヨタZEVファクトリー主査の井戸大介氏)。各市場で必要になる1充電当たりの航続距離の情報を基に「将来的な技術の伸びしろを加味して電池容量を決めた」(同氏)という。
モーターやトランスアクスル、インバーターを一体化して小型化を図った電動アクスル(e-Axle)や、充電機能と電力分配機能を集約して小型化したElectricity Supply Unit(ESU)をトヨタとして初採用。これらの大物部品を低い位置に搭載したことも重心を低くするのに寄与した(図4)。
トヨタでEV開発を主導する豊島浩二氏(トヨタZEVファクトリー チーフエンジニア)によれば、「e-Axleをセンター配置して左右の偏差をなくした。この点は(エンジン車用の)TNGAにはないe-TNGAの良さ」という。また電池容量に加えて前後質量配分を最適化したり、ボディーと骨格の締結を工夫して剛性を高めたりしている。