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写真:SUBARU
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SUBARU(スバル)の運転支援技術「アイサイト」。ステレオカメラで障害物を認識し、車両を制御することで衝突時の被害を軽減できる。自動車メーカーでは珍しく画像処理ロジックを内製するスバルは、2020年代後半にAI(ディープラーニング、深層学習)技術を採用し、さらに性能を高める考えだ。ステレオカメラにディープラーニングを適用すると何ができるのか。AI開発拠点SUBARU Lab副所長の齋藤 徹氏が解説する。

 カメラやミリ波レーダーなどを利用した運転支援機能が多く商品化されています。SUBARUでは1999年に「レガシィランカスター」に採用した「ADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)」が最初の商品で、「車間距離警報」「車線逸脱警報」「車間距離制御クルーズコントロール」「カーブ警報/制御」という4つの機能を搭載しました(図1)。2020年に発売した「レヴォーグ」や「アウトバック」では、高速道路のレーンチェンジ支援など多くの新機能をアイサイトに追加しています(図2)。

図1 ADAのステレオカメラ
図1 ADAのステレオカメラ
レガシィランカスター(1999年)に採用。(出所:SUBARU)
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図2 新世代アイサイトでさらに進化
図2 新世代アイサイトでさらに進化
2020年に発売したレヴォーグ。(出所:SUBARU)
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 カメラを使った自動車機能の進化の歴史は、画像処理の進化の歴史ともいえます。00年ごろは画像センサー部の解像度が低く、モノクロのVGA(約30万画素)が一般的でした。最近はメガピクセル(100万画素)級が主流となり、カラー化も進み、多くの物体を検出できるカメラへと進化してきました。

 SUBARUの最新のアイサイトでは、約230万画素のRGGB撮像素子を使っています。最近ではディープラーニングを使った技術開発が主流となり、複雑な画像認識ができるようになってきました。

 SUBARUにおけるカメラの研究開発の歴史は長く、1989年から30年以上続いています(図3)。画像処理のロジックを内製しており、SUBARUのエンジニアがプログラムのソースコードを書いています。画像処理とクルマを一体となって開発しているのがSUBARUの特徴であり、エンジニアが世界中の道路で直面した珍しい場面などを自身で感じながら適合や改良を加えてノウハウを蓄積してきました。

図3 ステレオカメラの30年間の歴史
図3 ステレオカメラの30年間の歴史
(出所:SUBARU)
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 本稿ではノウハウの蓄積であるアイサイトの画像処理ソフトウエアがどのように構成されているのか、将来どんな進化を目指しているのかを解説します。