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画像:トヨタ自動車
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デンソーが先進運転支援システム(ADAS)で反撃の狼煙(のろし)を上げた。同社が2022年1月に発表した第3世代ADASセンサーは、従来の 第2世代ADASセンサーに比べてコストを同等に抑えながら、交差点における出合い頭衝突への対応や、高速道路の単一車線における「ハンズオフ」走行などの新機能を搭載したのが特長である。ADASセンサーの競争軸は現在、こうした新機能の実現に移っている。デンソーは第3世代ADASセンサーを武器にして、国内外のメガサプライヤーに対抗する。

 デンソーの第3世代先進運転支援システム(ADAS)「Global Safety Package 3」(以下、GSP3)は既に、日野自動車の中型トラック「レンジャー」と、トヨタ自動車の中型SUV(多目的スポーツ車)「レクサスNX」に搭載されている。さらに、トヨタが22年1月13日に発売した中型ミニバンの新型「ノア/ヴォクシー」にも採用された(図1)。

図1 GSP3で使う単眼カメラとミリ波レーダー
図1 GSP3で使う単眼カメラとミリ波レーダー
日野自動車のレンジャーと、トヨタのレクサスNXに搭載されているほか、トヨタが22年1月に発売した新型ノア/ヴォクシーにも採用された。(画像:デンソー)
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 GSP3は、1個の単眼カメラと1個のミリ波レーダーで構成するセンサーフュージョンシステムである。センサー構成は第2世代ADAS(以下、GSP2)と同じだが、性能を高めることによる利用シーンの拡大と、小型化・低コスト化を両立させた。「GSP3のコストはGSP2と同水準」(同社)という。

出合い頭衝突の回避やハンズオフ可能に

 デンソーのGSP3を搭載したトヨタの新型ミニバンは、フロントウインドー上部の室内側に単眼カメラを1個、フロントグリル中央のエンブレム裏にミリ波レーダーを1個装着する(図2)。これらのセンサーを使う同車の自動ブレーキは、交差点における車両や二輪車との出合い頭衝突を回避できる。交差点を右折する際の直進対向車や、右左折時に前方から来る歩行者やサイクリスト(自転車運転者)にも対応している。

図2 トヨタの新型ミニバン「ノア/ヴォクシー」
図2 トヨタの新型ミニバン「ノア/ヴォクシー」
デンソーのGSP3を用いて、予防安全性能の強化や運転負荷の軽減を実現した。(画像:トヨタ自動車)
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 自動ブレーキの交差点対応以外に、トヨタの新型ミニバンではGSP3を用いて、高速道路や自動車専用道路の単一車線における「レベル2+」の運転支援機能「Advanced Drive(渋滞時支援)」も実現した。渋滞時(車速約40km/h以下、停止時を含む)に運転者が前方を注視しているといった一定の条件下で、「ハンズオフ」走行を可能にするものである。

 Advanced Driveは既に、トヨタの「MIRAI(ミライ)」や「レクサスLS」に搭載されている。デンソーの単眼カメラやステレオカメラ、ミリ波レーダー、LiDAR(レーザースキャナー)などを使い、高速道路の複数車線において先行車追従(ACC)や車線中央維持(LTA)、分岐、車線変更、追い越しなどを支援する(図3)。

図3 Advanced Driveのセンサー構成(ミライとレクサスNX)
図3 Advanced Driveのセンサー構成(ミライとレクサスNX)
ステレオカメラやロケーター望遠カメラ、ミリ波レーダー、LiDARなど、デンソーの多くのセンサーを搭載する。(デンソーの資料に日経Automotiveが一部加筆)
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 Advanced Driveを搭載するミライとレクサスLSはいずれも車両最低価格が800万円を超えるが、トヨタの新型ミニバンの最低価格は297万円(同システムを搭載するノアの場合、オプション装備)。同車のシステムは搭載するセンサーの種類や数、提供する機能を減らすことなどでシステムコストを抑え、価格が300万円以下の車両への設定を可能にした。

 このほかにトヨタの新型ミニバンではGSP3を使って、(1)車線変更支援、(2)カーブ時の減速支援機能、(3)運転時のリスクを先読みして対象物に近づき過ぎないように操舵(そうだ)やブレーキ操作を支援する機能なども実現した。