自動運転の高度化や交通事故死者ゼロの実現に向け、再び注目を集めているのがV2X(Vehicle to Everything)通信である。ただ、V2X通信を使いこなすためには、国や地域で無線通信方式や通信周波数帯を取り決め、それに見合った環境を整備していかなければならない。将来を見据え、日本はどんな道を進むべきか─。その一端が垣間見えてきた。
日本のV2X(Vehicle to Everything)通信には、「新たな通信方式が必要」─。最近、こう結論づけたのが、SIP第2期の自動運転である注1)。
V2X通信は、車載センサーを駆使する自律型の自動運転車/先進運転支援システム(ADAS)搭載車の限界を補う技術として期待されている。車車間(Vehicle to Vehicle、V2V)、歩車間(Vehicle to Pedestrian、V2P)、路車間(Vehicle to Infrastructure、V2I)、クラウド車両間(Vehicle to Network、V2N)で情報をやり取りすることで、車載センサーでは捉えられない遠くや死角の状況を把握したり、路上の落下物や車線別の渋滞の情報などを入手したりできるようになる(図1、2)。
図1 V2X通信が再注目される直接的な理由
自律型の自動運転システム/ADASの限界、およびNCAP(New Car Assessment Program、新車アセスメントプログラム)の動向がV2X通信に取り組む原動力になっている。AEBは衝突被害軽減ブレーキのこと。(出所:日経Automotive)
ただ、V2V/V2P/V2I通信では、有力な無線通信方式として、DSRC(Dedicated Short Range Communications)とセルラーV2X(C-V2X)が存在している注2、3)。それぞれが個別に進化していく見通しで、どちらを選ぶか、あるいはその選択を市場に任せるのかといった点で、国や地域の対応は異なっており、複雑化の要因になっている。
注2)DSRCは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)が策定した無線通信方式。Wi-Fi向けの標準規格「IEEE 802.11」を高度道路交通システム(ITS)で使用するV2V/V2I通信向けに拡張した「同802.11p」に基づく。車両と、車両/インフラ/歩行者を直接結ぶ直接通信(狭域通信)の規格となっている。
注6)これにより、米国は、いったんはDSRCからC-V2Xにかじを切ったとみられたが、米運輸省(DOT)や上下院議会、米電気通信情報局(NTIA)が抗議の姿勢を示している。さらに、州レベルの運輸省や米Intelligent Transportation Society of America(ITS America)が行政手続法違反として提訴するなど、先行きはまだ不透明な様相である。