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写真:日経Automotive、画像:テスラ
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電気自動車(EV)など電動車両の駆動モーターで、鉄心(コア)に使う材料を従来の電磁鋼板から置き換えようとする動きが出てきた。モーターの高回転化で増えるエネルギー損失を抑え、効率を高めるためだ。日立金属や東北大学発のベンチャー企業である東北マグネットインスティテュート(TMI)が、損失を減らせるモーターコア材料を開発し、駆動モーターでの実用化に挑む。

 自動車メーカーは搭載性の高さを重視し、モーターの小型化への要求を強めている。ただ、出力も犠牲にできない。小型化と高出力化を両立する対策として、モーターの高回転化が進んでいる。モーターの出力はトルクと回転数の積で決まり、トルクはモーターの体積に比例する。モーターを小型化しながら出力を高めるためには、高回転化が必要になる。現行のEVでは、回転数が多いもので約2万rpmに達する。

 高回転化に伴い、回転数が増加するほど大きくなる鉄損注)を減らすことが不可欠となる。モーターコアを構成する電磁鋼板には、1枚ごとに厚さ方向に渦電流が流れる。電磁鋼板1枚が厚いほど渦電流による鉄損が大きくなるため、厚さを薄くして鉄損を減らすのが一般的だ。

注)モーターコアにおける磁束変化を原因とし、主に熱として発生する電力損失のこと。損失の大きさは、モーターの回転数の2乗に比例する。

 駆動モーターに使う電磁鋼板では、高回転化に伴い0.35mmから0.25mm程度まで薄板化が進んできた。ただ、2万rpmを超える高回転の領域では、さらに薄板化する必要があり、対応が難しいとの見方がある。

 こうした中で、日立金属や東北大学発のベンチャー企業である東北マグネットインスティテュート(TMI)は、電磁鋼板に比べ鉄損を減らせるモーターコア材料を開発し、駆動モーターでの実用化を目指している。