誕生のきっかけは、“雲の上の人たち”の間で交わされた約束だった。2012年のある日、日産自動車の新型スポーツカー「フェアレディZ」(以下、Z)に搭載される9速AT(自動変速機)の開発が動き出した。
「図面は売るから、あとは好きに造ってくれ」
日産自動車とドイツDaimler(ダイムラー、当時)が資本提携していた頃の話だ(図1)。両社はパワートレーンの開発・生産における協業を議論するなかで、1つのプロジェクトをまとめた。
それが、ダイムラーの9速AT「9G-TRONIC」の図面を日産にライセンス提供することだった(図2)。日産は、2016年に発売予定の新型SUV(多目的スポーツ車)への搭載を想定してゴーサインを出した。