全4309文字
PR

ホンダは2022年12月、高度先進運転支援システム(ADAS)「Honda SENSING 360」 の次世代技術を発表した。車両の周囲を監視するセンサーの種類と数を現行システムと同じにしながら、高速道路や自動車専用道路の複数車線におけるハンズオフ走行を実現したのが最大の特徴である。2024年以降に同システムを、先進国で販売する新型車に順次搭載する計画だ。

写真:日経Automotive
写真:日経Automotive
[画像のクリックで拡大表示]

 現行のHonda SENSING 360(以下、現行360)は、2022年12月に中国で発売した中型SUV(多目的スポーツ車)「CR-V」に初めて搭載された。2023年内に日本でも搭載車を発売し、2030年には先進国で販売するすべての車種へ展開する計画だ。

 現行360では車両の周囲を監視するセンサーとして、広角化した1個の単眼カメラと5個のミリ波レーダーを使う。このうち広角化した単眼カメラは、フロントウインドー上部の室内側に搭載する。ミリ波レーダーは長距離用と中距離用の2種類があり、長距離用をフロントグリルの中央に1個、中距離用は前後バンパーの両隅に合計4個装着する。

 これらのセンサーを用いて現行360ではHonda SENSINGの基本13機能に加えて、(1)交差点の右左折や出合い頭衝突などに対応する自動ブレーキ(2)前方交差車両警報(3)車線変更支援(4)車線変更時衝突抑制(5)カーブ車速抑制─の5機能を提供する。

センサーの種類と数をEliteより減らす

 次世代技術を用いたHonda SENSING 360(以下、次世代360)は現行360の5機能に、(1)ハンズオフ機能付き高度車線内運転支援(2)ハンズオフ機能付き高度車線変更支援(3)運転者異常時対応(4)降車時車両接近警報(5)運転者の状態と前方リスクを検知した回避支援─の5機能を追加した(図1)。

図1 次世代360の新機能
図1 次世代360の新機能
現行360にハンズオフ機能付き高度車線内運転支援や同機能付き高度車線変更支援など5機能を追加した。(出所:ホンダ)
[画像のクリックで拡大表示]

 第1と第2の機能は既にホンダのレベル3の自動運転システム(ADS)/ADAS「Honda SENSING Elite(以下、Elite)」で実現しており、同社の旗艦セダン「レジェンド」に搭載されている。ただEliteの場合は2つの単眼カメラと5つのLiDAR(レーザーレーダー)、5つのミリ波レーダーを搭載していた。

 これに対して次世代360は、現行360と同じセンサー構成とした(図2)。Eliteよりもセンサーの種類と数を減らしながら、ADASの部分についてはEliteと同じ機能を実現した注)。日本の法定速度の上限である120km/hまで対応する。

図2 ハンズオフ機能を搭載した試験車両
図2 ハンズオフ機能を搭載した試験車両
ホンダの中型セダン「アコード」をベースにして開発した。単眼カメラを1個、ミリ波レーダーを5個搭載する。ホンダの資料を基に日経Automotiveが作成。
[画像のクリックで拡大表示]
注)次世代360に追加した第1と第2の機能は、高度運転支援「レベル2+」に相当する。一方、レジェンドに搭載しているEliteは、自動運転「レベル3」に相当するハンズオフ機能付き車線内運転支援機能「トラフィックジャムパイロット(渋滞運転支援)」も搭載する。同機能ではハンズオフに加えて、「アイズオフ」走行も可能だが、作動する車速を50km/h以下に制限している。