全2113文字
PR

スズキが電気自動車(EV)に変速機を搭載する検討を始めた。量産車への採用時期は「未定」(同社)とするが、軽自動車タイプのEVへの搭載を視野に入れる。EV向け変速機の搭載で先行するのはドイツPorsche(ポルシェ)。高級車メーカーとは違う、スズキ流の使いこなしを探る。

写真:スズキ、インモーティブ
写真:スズキ、インモーティブ
[画像のクリックで拡大表示]

 現状、量産中の電気自動車(EV)のほとんどは変速機を採用していない。1段の減速機という簡素な歯車機構で、モーターの出力を駆動輪に伝達する。日常走行時に支障はないが、EVが多様化していくなかで不満が市場から挙がっているのも事実。具体的には、「高速走行時に電池残量の減りが早い」「最高速度が抑制されて物足りない」「重い荷物を積んだ際の発進時に力不足を感じる」といった声だ。

 2段の変速機があれば、こうした不満を解消しやすい。高速走行時はギア比を大きくして効率を改善しつつ最高速度を引き上げ、低速走行時にはギア比を小さくして坂道での加速性能を高めるといった具合である。

 こうした利点に着目して、いち早く変速機をEVに採用したのがドイツPorsche(ポルシェ)だった。同社の高級EV「Taycan(タイカン)」は2段の変速機を備える(図1)。採用の大きな目的は、最高速度の確保である。高性能仕様のモデルで260km/hと、エンジン車に走り負けない性能を実現した。変速機がない多くの量産EVは、最高速度を160km/h以下に抑えている。

図1 ポルシェ「タイカン」の2段変速機
図1 ポルシェ「タイカン」の2段変速機
遊星歯車機構や湿式多板クラッチを使って変速する。(写真:ポルシェ)
[画像のクリックで拡大表示]

 ドイツAudi(アウディ)もEV向け変速機の採用に積極的なメーカーの1つ。タイカンとプラットフォーム(PF)を共用する高性能EV「e-tron GT」だけでなく、2023年後半から市場投入していく予定のEV専用PF「PPE(Premium Platform Electric)」適用車にも変速機を搭載できるようにした。