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自動運転の量産化を見すえ、低コストの車載センサー技術に注目が集まっている。2020年1月の「オートモーティブワールド2020」では量産時の価格を100ドルに抑えたソリッドステートLIDAR(レーザースキャナー)が登場した。人工知能(AI)を使ってクルマのセキュリティーを高めるソフトウエア技術や、電気自動車(EV)用電池の軽量化を実現する複合材料の展示なども目を引いた。

 米ベロダイン・ライダー(Velodyne LiDAR)は、量産時の想定価格が100ドル(110円/ドル換算で約1万1000円)のLIDAR(レーザースキャナー)製品「Velabit」を開発した(図1)。2020年1月の米国での展示会「CES 2020」で初お披露目した製品を日本の「オートモーティブワールド2020」でも公開した。2020年半ばに出荷する計画である。

図1 約100ドルのLIDAR「Velabit」
図1 約100ドルのLIDAR「Velabit」
(a)動作デモ用品、(b)モックアップ。(撮影:日経クロステック)
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 現在、自動運転の実験用車両に実装されているLIDARはほとんどがVelodyne製だ。ただし、大半が数百万円と非常に高価で、しかも高速回転する「メカ型」だった。

 一方のVelabitは、半導体技術を用いて回転しない「メカレス型」。「自動運転機能付き量産車への搭載を想定したもの」(Velodyneの代理店のアルゴ)で、寸法は61×61×35mmと手のひらに載るサイズだ。想定価格は100ドルと、同社の従来品の数百分の1に抑えた。

 ただし、高価なLIDARの測定距離が200m以上で視野角も360度全方位であるのに対して、Velabitの測定可能距離は約80m、視野角は水平方向が60度、垂直方向が10度と限定的だ。このため、「低速走行限定のクルマの前方センシングや、高速走行車の側面センシング、ドローンやロボットなど」(アルゴ)への適用を想定する。

業界トップが自ら価格破壊

 メカレス型のLIDARはVelodyneの競合メーカー多数も開発中で、既に出荷している米クアナジー・システムズ(Quanergy Systems)のようなメーカーもある。ただ、Quanergyの製品は2019年では量産品で300~500ドル。100ドルになるのは2025年を想定していた。Velodyneが言う「量産時に100ドル」が、いつごろを想定しているのかは明かさないが、業界トップが自ら価格破壊を仕掛けた格好になる。

 Velodyneは今回、Velabitに加えて、2019年1月の「CES 2019」で発表した測定距離などの性能値がより高いメカレス型のLIDARも出展した。具体的には、測定距離が約200m、視野角水平方向120度、垂直方向35度で価格が約3000ドルの「Velarray」、形状が半球(ドーム)状で、測定距離が0.1~30m、視野角が水平、垂直方向共に180度と広い「VelaDome」などである(図23)。VelaDomeには、「MLA(Micro LiDAR Array)」と呼ぶ、レーザー光の送受信器と信号処理回路を約2mm角の寸法の小型モジュールに実装した部品を用いているとする。

(a)
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(b)
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図2 約3000ドルのLIDAR「Velarray」
(a)Velodyneのコンセプトカーのフロントウインドー内側、中央付近に設置されたVelarray(動作デモ用)。(b)Velarrayの動作デモで3Dセンシング結果を表示した例。(撮影:日経クロステック)
図3 「VelaDome」のコンセプトカーへの実装例
図3 「VelaDome」のコンセプトカーへの実装例
動作品かどうかは不明。クルマの側面の前方と後方に2カ所実装されている。(撮影:日経クロステック)
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 Velodyneが今回出展した自動運転のコンセプトカーでは、従来の実験車両と異なり、車両の上部に突き出したLIDARがなかった。代わりに、フロントウインドー内側の中央部にVelarray、側面に2カ所ずつVelaDomeを配置した。「1台の車両に目的に応じて複数のLiDARを使う時代になってきた」(アルゴ)。