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【特許】
コネクテッドカー訴訟、ますます激化か?
根底に通信業界と自動車業界の商慣習の違い

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 「コネクテッドカーの普及で携帯通信技術などの標準必須特許(SEP)を巡る訴訟がますます激化する」。ゾンデルホフ&アインゼル法律特許事務所 弁理士・弁護士の松永章吾氏は、コネクテッドカー訴訟についてこう述べた。

 携帯通信技術などに関するSEP訴訟は、2010年代にSEPの権利者が、実施者(スマートフォンメーカーなど)に対して不利なライセンスを強いる「ホールドアップ」と呼ばれる行為が問題視され、権利者による差し止め要求を制約する議論が多かった。

 現在、SEPの実施者は情報通信企業から、自動車メーカーなどの“異業種メーカー”に変わった。当初は実施者に有利な前述の制約論が進むものと予想されたが、米中貿易摩擦などを背景に、「2020年前後から権利者保護の流れが強まった」(同氏)という。

 こうしたコネクテッドカー訴訟の本質は、「情報通信業界と自動車業界の異なる商慣習の衝突」(同氏)だとする。情報通信業界では完成品へのライセンスが一般的なのに対し、自動車メーカーでは特許保証された部品を調達することが当たり前になっている。「残念ながら、現在の自動車メーカーは世界のルールの変化についていけていない」(同氏)と指摘した。(木村雅秀)