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写真:FREYR Battery
写真:FREYR Battery
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電池のライフサイクルにおける二酸化炭素(CO2)排出量をゼロにする“CO2フリー電池”を最短距離で大量生産する─。そんな目標を掲げるのが、ノルウェーの電池スタートアップFREYR Battery(フレイルバッテリー)だ。同社でCTO(最高技術責任者)を務める川口竜太氏は、「ゼロからの技術開発はやらない」と公言している。その真意はどこにあり、FREYRは何に注力していくのか。

まず、これまでの経歴を聞きたい。

 日産自動車で車載電池や電気自動車(EV)の開発に従事してきた。「リーフ」の企画から量産立ち上げまでを経験し、オートモーティブエナジーサプライ(AESC)にも出向した。その後、EVプロジェクトを立ち上げたばかりの英Dyson(ダイソン)に移籍して3年ほどを過ごした。2019年にDysonがEV開発から撤退したのを機に、FREYRに参画した。

電池スタートアップは一般に、独自の電池技術の開発に注力する傾向が強い。その中で「ゼロからの技術開発をやらない」方針は異色だ。その真意やFREYRの戦略を確認したい。

 それは日産時代の経験から来ているものだ。日産では電池セルの生産立ち上げに携わっていた。そこで実感したのが、電池生産の大変さだ。日産は量産に至るまでに何年も電池を開発し、パートナーであるNECも量産に向けて準備を進めてきた。だが、少しスケールアップしただけでものすごい苦労した。その後、米国や英国での電池工場の立ち上げもかなり大変だった。次世代の電池を量産する際にもまた苦労して……。スタートアップはなおさらで、ゼロから開発を始めたら何年かかっても量産までもっていけない。

 当社は大規模な市場を見ているので、ニッチなアプリケーションには興味がない。GWhスケールの電池が求められる市場を狙っており、まず念頭に置くのがクルマだ。自動車市場にゼロから参入していって採用してもらえるか。そして、利益がある形で生産できるか。新興勢では無理だろう。既に既存の大手電池メーカーがたくさんいる。

 ではどうするか。既存のプレーヤーと一緒にやればいい。まだ欧州に出てこれていないプレーヤーと組めばいいと考えた。大手は自前で欧州進出をするだろうが、そこまでリスクを背負えない電池メーカーも少なくない。そことのパートナーシップで一緒にやれないかというのが、FREYRの設立当初からの考え方だ。ゼロからの技術開発は彼らに任せ、当社は量産段階に注力する。ノルウェーという地の利を生かしながら、CO2排出量の少ない電池をいち早く大量生産に持っていく。

 日本メーカーはまだ欧州市場に進出できずにいる。日本企業と組んで事業を拡大していくことも考えている。

電池の競争軸の変化をどう捉えているか。これまでは出力やエネルギー密度といった性能とコストの2つが重要だったが、CO2排出量という第3の軸が出てきたように思う。

 3年前くらいからCO2排出量が重要になってきた。自動車メーカーと電池調達に関する話し合いをすると、真っ先に聞かれるのがCO2排出量だ。コストや性能よりも先に聞かれるのは時代の大きな変化だ。

 問題は、電池のライフサイクルにおけるCO2排出量の証明だ。当社が、「世界で最もCO2排出量の少ない電池を製造できます」と言うと、「それをどう証明するのか」と必ず聞かれる。第三者がきちんと証明した電池を使いたいと。ただ、まだ第三者機関による電池のCO2排出量の証明は、仕組みができ上がっていない。

 どの電池メーカーも「CO2フリーの電池を造ります」と言っている。言ったもの勝ちの状態だが、本当にCO2フリーなのか。そしてコストは見合っているか。ブロックチェーン技術を使って電池材料のトレーサビリティーを確認し、管理するプラットフォームの構築を目指す会社も乱立してきた。