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写真:トヨタ自動車、テスラ、日産自動車
写真:トヨタ自動車、テスラ、日産自動車
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電気自動車(EV)向けの電池を巡る開発競争や受注合戦が激化している。中国や韓国の電池メーカーの勢いが目立つなか、日本に軸足を置く各社はどう対抗するか。トヨタ自動車とパナソニックの電池合弁会社プライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES)と米Tesla(テスラ)との関係が強いパナソニックエナジー、日産自動車が2割出資する電池メーカーの中国Envision AESC Group(エンビジョンAESCグループ)の3社の社長や技術トップに戦略を聞いた。

 プライムプラネットエナジー&ソリューションズ 
23~24年に電池資源価格は下がる

電気自動車(EV)向けリチウムイオン電池の開発で中韓メーカーが攻勢をかける一方、日本勢の存在感が薄い。トヨタ自動車とパナソニックの電池合弁会社プライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES)社長の好田博昭氏に、巻き返しの戦略を聞いた。

プライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES)社長の好田博昭氏
プライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES)社長の好田博昭氏
(撮影:宮原一郎)
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中国・寧徳時代新能源科技(CATL)や中国・比亜迪(BYD)、韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)などがEV電池市場を席巻中だ。中国勢や韓国勢は、政府や自治体から多額の補助金や優遇措置を受けることで、コスト競争力を高めていると言われている。

 競合他社がどんな補助を受けているのか全て調べた。当社は中国・大連市に工場が2棟あり、2022年2月から3棟目を建設し始めている。工場建設に際しては、大連市長に「CATLとBYDに負けない中国ナンバーワンの工場を造りたい」と直接話し、詳細は明かせないが競合他社と同等水準の“満額回答”をもらっている。

 土地の賃貸料をものすごく安くしてもらい、補助金や税制優遇なども受けられた。あとは当社が生産性を大きく高めれば、競合と十分に勝負できると考えている。

トヨタのEV「bZ4X」のリチウムイオン電池は、PPESとともにCATLも供給する。

 兵庫県・姫路工場の生産能力を倍にして、トヨタに供給する。現在年産6GWhの能力のところ、22年内に同12GWhに拡大する計画だ。価格面ではCATLに比べて、現状は少し高いくらいとみている。

コスト競争力をどう高めるか。

 25年の次世代電池はコストを現行比6割下げて、電池パックの段階で1kWh当たり100ドル程度の水準を目指す。もちろん電池セルはもっと安くなる。設備投資を大幅に抑えるし、また同じラインで異なる大きさの電池セルが造れるようにする。

 当社の設立は20年4月だが、三洋電機時代の04年ごろから続く多くの顧客と取引している。ただ顧客の要望に合わせて電池を開発してきたため、ハイブリッド車(HEV)用で10種類くらい、EVとプラグインハイブリッド車(PHEV)用で8種類くらいと、似て非なるものを多く抱えてしまった。今後はなるべく共通品を採用してもらうことで、コストを下げる取り組みを進める。

電池資源は獲得競争になっている。

 リチウム(Li)とニッケル(Ni)は、共に確保するのが大変だ。Liは基本的に大半が電池向け。これまで相場がずっと下がっていて、供給を絞ってきたところで、コロナ禍で工事が進まなかったりしている。Li自体は豊富にあるが、採掘企業が供給をずっと抑えてきた。

 資源価格の市況変化については、自動車メーカーと負担をどうしようか話し合っている。上がるときもあれば、下がるときもある。

 ただLiにしてもNiにしても、供給と需要の関係がずれて現在高騰しているが、23~24年ごろに需給が適正化されれば、確実に下がるとみている。

トヨタは30年にEVを350万台販売する目標を掲げ、電池の生産能力を280GWhと大幅に高める計画だ。PPESはそのうちどれくらい手掛ける方針か。

 内々の目標はあるが、対外的に公表するのは時期尚早だ。まずは自らの競争力を高めて、環境対策を進めていけば、おのずと結果はついてくると考えている。各社の目標値は頻繁に変更されている状況だ。当社は「反射神経」を高めて準備する。

トヨタは米国でグループの豊田通商と電池工場を設立すると発表した。PPESが手掛けるものだと思っていた。

 総合的に判断したのだと思う。今後は電池がエンジンの代わりになる。エンジンの雇用をどう電池で吸収するのかなどを考えて、「手の内化」するのだろう。

 また当社が関係していないような見方をされているが、当社は電池設計や製造準備を従来通り手掛ける。トヨタがやるのは工場運営のところ。トヨタは米国に強力なネットワークを有している。トヨタが米国で土地を確保し、工場を建設し、人を採用して、工場を運営する。

 一方で電池製造の専門的なところは、トヨタから対価を頂いて当社の専門チームが米国で準備を始めている。

 ただずっとこの形態というわけではなく、今回はいったんこういう形に落ち着いたということ。いずれ違う形態になることもあり得る。

(清水直茂=日本経済新聞社)