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(写真:BMW、Daimler、Volkswagen)
(写真:BMW、Daimler、Volkswagen)
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2021年のCO2排出量の規制強化を目前に、欧州自動車メーカーの動きが慌ただしくなってきた。多くの低CO2エミッションのクルマを売らなくてはならないタイミングで、横やりが入ったからだ。その1つとして最も懸念されているのが、世界中に広がる新型コロナウイルスの影響である。タイミングを逃すまいと、次の一手を打つ欧州メーカー。その戦略を追った。

 新型コロナウイルスの影響が、自動車業界を飲み込んでいる。中国を中心としたサプライチェーン(供給網)の停止や、生産工場の休止、経済停滞による自動車販売へのブレーキなど、メーカーの業績への影響も大きい。2020年の後半、さらには2021年以降に販売される自動車にも響きそうだ。

 自動車メーカーにとっては頭の痛い問題もある。大々的にユーザーにアピールするモーターショーの機会が奪われたことが、その1つだ。

 例えば2020年2月17日ショーの主催者は、2020年4月21日からの開幕を予定していた、北京モーターショー(Beijing International Automotive Exhibition 2020)の延期を発表。世界最大の自動車市場である中国でのショーだけに、自動車メーカーにとっては大きな痛手となる。

 それ以上に影響が心配されるのが、2020年3月5日からの開催を予定していたジュネーブモーターショー2020(Geneva International Motor Show)の中止だ(図1)。欧州での大きなショーであっただけでなく、各社とも、このジュネーブショーで世界初公開となる車種を用意していたからだ。2021年の販売に向けての新型車のお披露目となるはずだった(図2)。

図1 ジュネーブモーターショー2020は開催直前に中止を決定
図1 ジュネーブモーターショー2020は開催直前に中止を決定
ショーの幕開けとなる「European Car of the Year」の発表会を予定していた2020年3月2日のわずか3日前、2020年2月28日に主催者が中止を決定。スイス政府の命令を受けたものだった。(出所:Geneva International Motor Show)
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図2 準備が進められていたジュネーブモーターショー2020の会場の様子
図2 準備が進められていたジュネーブモーターショー2020の会場の様子
(出所:Geneva International Motor Show)
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 それだけに、ジュネーブショーの開催は多くのステークホルダーが強く希望し、開催日ぎりぎりまで主催者側の判断が揺れていたようだ。主催者が中止を発表したのは、ショーの幕開けとなる「European Car of the Year」の発表会を予定していた2020年3月2日のわずか3日前、2020年2月28日のこと。その2日前には「予定通り開催する」と関係各社に通達していた。まさに、中止の決定は急転直下の出来事だった。

 このドタバタ劇について、ある大手自動車メーカーの関係者は「さまざまなステークホルダーが主催者に対して、開催を促すプレッシャーをかけていたのではないか」と語る。だとすると、このプレッシャーは相当大きなものだっただろう。結局、スイス政府が2020年2月28日に発表した「1000人を超えるイベントの開催を3月15日まで禁止する」といった命令を受けて主催者側がジュネーブショーの中止を決定した。この政府の命令に主催者は救われた形とも考えられる。

 展示会自体が中止になったとはいえ、2020年のジュネーブショーにおける新型車の発表は、どの自動車メーカーにとっても取りやめるわけにはいかないようだ。各社とも急きょ、当初予定していた2020年3月3日のプレス向け説明会(プレスカンファレンス)の時間にほぼ合わせる形で、発表会をネットで中継する方針を決めた。その背景には、2021年から欧州で始まる二酸化炭素(CO2)排出規制の強化(平均で95g/km)を見据えた重要なタイミングでもあるという事情が見え隠れする。

 即座に動いたのは、ドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen:VW)や同ダイムラー(Daimler)、同BMWといったドイツ勢のメーカーだった。各社とも自社サイトでのネット中継を素早く準備。今回の発表にかけるドイツ勢自動車メーカーの必死さが感じ取れた。このタイミングで環境に良い自動車をアピールし損ねるわけにはいかないからだ。

 同時にジュネーブショーの主催者もネット中継を用意。出展者側と主催者側がそれぞれ同時に同じ中継動画を配信するといった異例の体制で進められた(図34)。

図3 ダイムラーは「Mercedes me media」で新型車やコンセプトカーを発表
図3 ダイムラーは「Mercedes me media」で新型車やコンセプトカーを発表
ダイムラーはスタジオにメルセデス・ベンツの新型車を持ち込んで発表会を実施。ネットで中継した。(出所:Daimler)
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図4 ジュネーブモーターショーの事務局は「Virtual Press Day」を急きょ準備
図4 ジュネーブモーターショーの事務局は「Virtual Press Day」を急きょ準備
ショーで予定されていた各自動車メーカーのプレスカンファレンスをネット中継するまとめページを事務局が開設。当初の予定を基に、各社のプレゼンテーションを中継した。(出所:Geneva International Motor Show)
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 では、いったいどのような発表が行われたのだろうか。プレスカンファレンスのネット中継内容や、各社が発表したプレスリリースなどから、CO2排出量削減に向けた動向を読み解いていこう。