欧州で2021年に強化される環境規制にどう対応するか。新型の電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)など、自動車メーカー各社は独自開発した新技術を続々と導入し始めた。そんな中、異色の電動化戦略を打ち立てたのが、「1円でも安く」を信条とするスズキだ。自前技術にこだわらず“コスト最優先”という、スズキらしいハイブリッド車(HEV)戦略の全貌が見えてきた。
欧州市場におけるスズキのHEV戦略の柱は2本(図1)。1つは、日本メーカーとしては初となる48VマイルドHEVの量産である。欧州市場で20年4月に販売を開始した。欧州の自動車メーカーが積極的に推進する48V化の波を利用して、メガサプライヤーが開発した48Vの標準部品を調達しつつ、スズキが量産済みの12Vマイルドハイブリッド機構をベースに仕上げた。
もう1本の柱が、トヨタ自動車からOEM(相手先ブランドによる生産)で調達するストロングHEVやPHEVだ。スズキは自社開発したストロングHEVも持つが、それは使わず欧州規制を乗り切る考えだ。
規制値とは25g/km以上の開き
21年に強化される欧州規制は、新車の二酸化炭素(CO2)排出量を平均で95g/km以下にするというもの。守れなければ、課された規制値を1g/km超過するごとに、「95ユーロ×販売台数」の罰金を求められる。なお、CO2排出量は、NEDC(新欧州ドライビングサイクル)モード基準の数値である。
市場調査会社の英JATO Dynamics(JATOダイナミクス)によると、スズキが19年に販売した新車の平均CO2排出量は120.6g/kmである。市場全体の平均値である121.8g/kmを下回っているものの、95g/kmとは大きな開きがある。