「2025年までに世界の売上高の50%を電気自動車(EV)によるものとし、30年までに販売する全てのクルマをEVにする」─。スウェーデンVolvo(ボルボ)は21年3月、EV専業化を進めることを発表した(図1)。
欧州高級車ブランドのEV専業化は、21年2月中旬にも英Jaguar Land Rover(ジャガー・ランドローバー、JLR)の「Jaguar(ジャガー)」が発表している。米General Motors(ゼネラル・モーターズ、GM)も同年1月下旬に、35年までに全乗用車をEVなどのZEV(Zero Emission Vehicle)にする目標を公表した。30年までに欧州向けの乗用車を全てEVにするという米Ford Motor(フォード・モーター)のような企業もある。30年代に向け、欧米を中心に脱エンジンを目指すメーカーが増えつつある。
ボルボがEV専業化を決めたのは、電動車に対する需要が高まる一方で、エンジン車の市場は縮小しているからだ。同社最高経営責任者(CEO)のHakan Samuelsson(ホーカン・サミュエルソン、最初のaは上リングが付く)氏は「成功を維持するには、収益性の高い成長が必要である。そのために、縮小するビジネスに投資する代わりに、電気とオンラインの将来に投資する」と語る注)。この決断の背後には、利用可能な高品質の充電インフラの急速な拡大と(EVを後押しする)法律が、消費者のEVに対する受容性を高めるとの期待があるという。
ただし、ディーラーが不要になるわけではない。ディーラーは、EV以外のセールスを続ける他、EVにおいても実車の確認や試乗、整備・アフターサービス、自動車保険の販売などのサービスを提供する拠点となる。また、EVの車両については、ボルボの直販となるため、ディーラーは車両を仕入れなくて済み、そのための資金繰りの心配はなくなる。各店舗に必要だったセールスの要員についても、EVについてはオンラインのセールス要員としてボルボが集約して抱えることなどが考えられ、ディーラーの固定費削減につながる可能性もある。それらによって販売コストを圧縮できれば、エンジン併用の電動車と比べて利益率の低いEVからも、より多くの利益を上げられるようになる。
実際、欧州の新車販売台数に占めるEVの比率は急速に伸びてきている。ボルボの日本法人であるボルボ・カー・ジャパン(東京・港)によると、20年12月の同比率は、オランダが69%、ノルウェーが67%、スウェーデンが19%、英国が17%、ドイツが14%と高まっている(図2)。プラグインハイブリッド車(PHEV)を含めるとその比率は、順に、72%、87%、49%、23%、26%となっている(図3)。
ボルボでも、EVとPHEVから成る製品群「Recharge Line-up」の20年下期の販売台数が、前年比の約3倍と好調。欧州では、同社の販売台数の実に3台に1台はPHEVとなっているという。ただ、同社CEOのサミュエルソン氏は「エンジンを搭載したクルマには長期的な未来はない」とし、プレミアムEVのセグメントでリーダーになることに全力を注ぐと語る。