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欧州で始まった実路走行における排出ガス規制「RDE」。エンジン開発の方向性を大きく変えるほどの強い影響力がある。RDEの実現に大きく貢献したのが、走行中に排出ガスを計測できる技術「PEMS」である。PEMSの基本となる計測原理を紹介する。(編集部)

 欧州連合(EU)では2011年、乗用車の「RDE(Real Driving Emissions)」規制のための排出ガス試験手順を検討し始めた。実路走行中の排出ガス量を対象とするRDE規制は、試験室内で規定の運転パターンを走行した際の排出ガス量に基づく従来の規制とは、大きく考え方が異なる。そのため排出ガス試験時の条件や手法について、新しく定義していくことが必要だった。そして2017年9月、EU加盟国において、新車の型式認証要件として窒素酸化物(NOx)と粒子数(PN)のRDE試験が導入され、RDE規制が開始された。

EUから世界各国へ

 実際の道路を走行するRDE試験では、決められた運転パターンというものは存在しない。とはいえ、一定の試験条件は定められている。路上を適当に走るだけでは、認証試験としての公平性を担保できないためである。

 例えば、試験時の走行速度には、低速から順に「Urban(市街地)」「Rural(郊外路)」「Motorway(高速道路)」の3つの区分を設ける。そして、各区分の走行距離が、総走行距離における比率として定められている。環境条件についても、外気温や高度の範囲が決まっている。運転方法にも条件があり、加速度などの指標から運転が極端にアグレッシブ、または滑らかすぎると判断されると、試験は無効になる。もちろん、試験時間にも制限がある。

 EUが先鞭をつけたRDEという考え方は、日本や中国、インド、韓国、ブラジルなどでも規制として導入される動きがある(図1)。ただし、試験方法の詳細までEUと全く同じというわけではない。各国の道路交通事情や環境に合わせた方法が検討されており、それぞれ独自のRDE規制になる見通しである(表1)。

図1 RDEの導入時期
図1 RDEの導入時期
欧州を皮切りに、世界各国で導入する計画がある。
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表1 RDEの試験条件の一例
表1 RDEの試験条件の一例
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 例えばインドや日本の場合は、EUよりも外気温の範囲が高温に、そして車速は遅くなる見込みである。また中国では標高の高い地域があるため、環境条件として高度が高くなる予定だ。