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「平均気温の上昇を1.5度に抑える努力をする」(国際連合)、「乗用車の二酸化炭素(CO2)の排出量を2030年に2021年比で37.5%減らす」〔欧州連合(EU)〕─。電動車の普及を促す動きが加速している。最終回は、電動車に関わる環境規制と計測技術について解説する。(編集部)

 2015年、国際連合気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)でパリ協定が採択され、「産業革命前からの世界の平均気温上昇を2度より十分低く保ち、1.5度に抑える努力をする」という目標が定められた。温室効果ガスとして気候変動への影響が懸念されるCO2は、その全排出量のうち約20%を運輸業界が占めている。COP21の結果は、運輸業界に改めてCO2排出削減を強く意識させ、燃費に優れた環境対応車への関心を高めるきっかけとなった。「乗用車のCO2排出量を2030年に2021年比で37.5%減らす」という2018年12月のEUの合意もある。

 環境対応車として注目を集めているものの1つが、電池あるいは電池とエンジンの両方で走行する「電動車(xEV)」である。実際、xEVの導入を促進すべく、様々な産業政策を採用する国・自治体が増えてきている。xEVの普及に伴い、自動車の排出ガス規制や燃費規制においても、xEVの試験方法を明確に定義する必要が出てきた。今回は、排出ガス規制におけるxEVの位置づけと、xEV燃費規制のための試験方法、さらに、xEV開発プロセスで必要となる各種計測技術の一例を紹介する。

排出ガス規制とxEV

 米国カリフォルニア州は、地形上スモッグが停滞しやすいとされ、以前より大気環境改善を目的とした自動車排出ガス対策に力を入れている。その一環として1990年より、大手自動車メーカーに対しゼロエミッション車(ZEV:Zero Emission Vehicle)の販売を義務付ける「ZEV規制」を開始した。同州において一定台数以上の自動車を生産・輸入するメーカーは、販売台数の一定比率に当たる分だけZEVを販売しなければならない。ZEVとして認められるのは、電気自動車(BEV)や燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)などである。2018年モデルからはハイブリッド車(HEV)はZEVの対象外となるなど、現在も規制の強化が進められている。

 中国では、深刻な大気汚染への対策、および自動車産業の振興政策として、「NEV(New Energy Vehicle)規制」を2019年から導入した。中国で一定台数以上の自動車を生産・輸入するメーカーに対して、国内での販売台数の一定比率(実際にはクレジットに換算)をNEVでまかなうことを求める。対象車両はBEV、PHEV、FCVであり、クレジットは航続距離やパワートレーンの種類によって決定する。また、国全体としてNEVの普及に力を入れており、NEV購入時の補助金やナンバープレートの優先的交付、都市部への乗り入れ制限の解除といった優遇制度に加え、充電インフラの整備を進めている。

 こういった背景により、IEA(International Energy Agency)では、xEVの販売比率は2020年時点ではまだ約15%であるが、2050年には51%程度まで普及すると予測している(図1)。しかも、2015年のxEV販売のほとんどがHEVで占められていたのに対し、2050年にはPHEV・BEVが中心になるとの予想だ。つまり、今後しばらくはまだ内燃機関車(ICEV)が主流であるものの、将来的にはxEVの割合が大幅に増える可能性がある。

図1 IEAによる乗用車の世界販売台数の予測
図1 IEAによる乗用車の世界販売台数の予測
世界の平均気温の上昇幅を今世紀末時点で産業革命前から2度未満に抑えるというパリ協定における長期目標「2度シナリオ」(2DS)の実現を前提とした場合のPassenger Light-Duty Vehicles(PLDVs)のパワートレーン別の世界販売台数予測。「IEA Energy Technology Perspectives 2017」を参考に堀場製作所が作成。
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