電動車両の普及計画を5年も前倒ししたトヨタ自動車。あくまで主軸はハイブリッド車(HEV)で、電気自動車(EV)とは一定の距離を置く。EV市場が“協調”から“競争”に移った際のEVの競争軸となるのが電池である。トヨタは全固体電池の実用化を急ぐが、中国・寧徳時代新能源科技(CATL)は否定的だ。
EVに割くコストや労力を最小限に抑え、できるだけ多くのHEVを売る─。これがトヨタの電動化戦略の本心だ(図1)。「まだ市場が小さく、本当にEVが事業として成り立つか否かが分からない」。トヨタ副社長の寺師茂樹氏は、同社がEVと一定の距離を置く理由をこう説明する(別掲記事参照)。
事業性の見通しは立たないものの、厳しくなる環境規制に対応するためには最低限のEVを売らなければならない。黎明(れいめい)期のEV市場を乗り切るためのトヨタの戦略は“協調”だ。「(電動車両の市場)シェアが30%や40%になったときには熾烈(しれつ)な競争になるが、ある程度の市場規模になるまでは各社の協力体制が要るのではないだろうか。基盤技術はできる限りみんなで使って市場を広げていく」(寺師氏)という。