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ホンダが、エンジン車並みの航続距離に達する電気自動車(EV)を開発する。EVは近距離用途のニッチな車両と位置付けていた考えを転換。欧州の環境規制や中国のEV推進政策を考慮した。新しく開発するEV専用プラットフォームは、可変領域を大きくしてVWを追撃する。

 ホンダが電気自動車(EV)専用のプラットフォーム(PF)を新しく開発すると発表した(図1)。EV航続距離は明かさないが、500km超を視野に入れる。中型車向けで、後部モーター・後輪駆動(RR)を基本にする。投入時期は、2022年ごろになりそうだ。

図1 開発中の中型EV用プラットフォーム
図1 開発中の中型EV用プラットフォーム
電池を床下に配置し、後輪駆動を基本とする。(出所:ホンダ)
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 「都市間で移動できるCからDセグメントの車両」(本田技術研究所常務執行役員オートモービルセンターパワーユニット開発統括の松尾歩氏)を想定したPFになる。車種として、「SUV(多目的スポーツ車)やCUV(クロスオーバー・ユーティリティー・ビークル)、セダン」(松尾氏)を用意すると明かす。

 2030年に世界販売の15%近くをEVにする戦略を掲げるホンダ。新PFは、達成に向けた切り札になる。

 ホンダはかねて、EVは近距離用と考えて、中長距離用には燃料電池車(FCV)が“最適解”と見ていた。質量の大きな電池を大量に搭載する中長距離用のEVは、「電池を運ぶためのクルマ」(ホンダ関係者)と言える非効率な側面があり、どちらかといえば否定的だった。

 ホンダの根底にある考えは、今も変わっていないようだ。それでも中長距離用EVの開発に本腰を入れるのは、規制を強化する中国と米国の一部の州の方針に対応するためだ。EVを大量に販売しなければならず、エンジン車と同等の距離を走れるEVを投入することが“現実解”だった。

 開発中の新しいPFは後ろにモーターを搭載し、後輪を駆動するRRを基本とした(図2)。「ホンダらしい走り」(松尾氏)を狙う。前と後ろで操舵輪と駆動輪を分けて、操縦安定性を高めやすくなる。

図2 後輪側のモーターとインバーター、減速機
図2 後輪側のモーターとインバーター、減速機
後輪駆動を基本とする。(出所:ホンダ)
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 4輪駆動(4WD)にするときは、前側にモーターを追加して2モーター構成とし、前後輪をそれぞれ駆動する(図3)。PFは可変領域と固定領域に分ける注1)。固定領域は全車種で共通として部品を共用しやすくする(図4)。

図3 前輪側の部品配置
図3 前輪側の部品配置
充電口やインバーターを配置する。4輪駆動にするときは前輪側にもモーターを搭載する。(出所:ホンダ)
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注1)可変領域は外板や内装などで、外観などを差異化する。固定領域は例えば、電池パックの幅や後輪駆動モーターの搭載位置などである。また、車両の全幅や地上高、運転席の位置、電池搭載量などは可変領域である。

図4 開発中の中型EV用プラットフォームの概要
図4 開発中の中型EV用プラットフォームの概要
電池を床下に配置し、後輪駆動を基本とする。固定領域と可変領域、選択領域に分ける。ホンダの資料を基に日経Automotive作成。
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