「当社には熱がある」─。あるデンソーの技術者は言う。比喩ではなく、文字通りだ。欧米のメガサプライヤーになく、デンソーが強みを持つのが熱を自在に操る技術である。
デンソー社長の有馬浩二氏は、カーエアコンを中心とするサーマルシステムを「成熟事業」と位置付ける(図1)。世界シェアでトップの製品をそろえ、2018年度は同社の売上高のうち26.2%の1兆4039億円に達した。
2025年度に全社売上高7兆円の目標を掲げるデンソーは、「成熟事業(であるサーマルシステム)でしっかり稼ぐ体質を作りつつ、成長市場にリソースを割いていく」(有馬氏)戦略を進める(図2)。サーマルシステムで手堅く収益を下支えし、「成長事業」の電動化や自動運転に向けた次世代技術の種まきを急ぐ。成長事業での欧米メガサプライヤーとの違いは、半導体を中心とするコア技術を内製する点だ。