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たとえ50%の熱効率を達成できても、内燃機関が持続可能な存在になるわけではない。生き残りの最低条件は、二酸化炭素(CO2)排出量を電気自動車(EV)並みに抑えることだ。日本のエンジン技術者はどう立ち向かうのか。(編集部)

 「できない言い訳に専門知識を駆使するな。どうしたらできるかを考えよう」─。マツダで長年言われてきたことだが、今や全ての内燃機関技術者がこの心境ではないだろうか。

 内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「革新的燃焼技術」(以下、SIP燃焼)では、困難視された熱効率50%を達成できた。だが、これによって内燃機関が持続可能な存在になるわけではない。

 AICEがスローガンとして掲げた、二酸化炭素(CO2)や有害物質の排出をなくす「ゼロエミッション」を実現しなければ、内燃機関は生き残れない。第1ステップとして、CO2排出量をWell-to-Wheel(1次エネルギーの採掘から走行まで、WtW)で電気自動車(EV)並みにする挑戦を続けていく。

SIPの成果を活用してEV並みのCO2

 WtWでEV並みのCO2排出量を実現するというAICEの取り組みは、2つの観点でSIP燃焼の成果をベースにしている。

 1つめは、研究の企画や推進、成果利用までのプロセスにおいて、SIP燃焼で構築された資産を活用することである。

 企画段階においては、SIP燃焼の学間連携が発展した「ゼロエミッションモビリティパワーソース研究コンソーシアム」(通称ZEMコンソ)とAICEが一体となって、プロジェクト研究の研究テーマを検討した。現在は21テーマを選定し研究を進めている。

 推進段階では、SIP燃焼と同様の産学の協議チーム(ワーキンググループ、WG)を構成し、研究進捗の共有化、産学の知見結集により、研究の方向性の修正や産業界による支援などを協議し、課題の解決を図る。

 WGのメンバー数は1テーマあたり50人弱で、総勢でのべ1000人近い。実際の研究においては、SIP燃焼の研究拠点や設備を活用しながら燃焼の現象解明を進め、SIPモデルの改良などにつなげている。これらの研究成果は、SIP燃焼のDB(データベース)を進化させたAICEのDBに格納する。

 成果利用の段階では、これらのモデルの総合的な検証を行いながら産業界が活用しやすい形に整えることで、AICE組合員のみならず、共同研究企業での活発な成果活用、実用化につなげていく。

 2つめは、プロジェクト研究の研究内容の決定にあたって、SIP燃焼の成果をベースとしている点である。21のプロジェクト研究テーマの全体像については連載の第6回で示しており、今回はその中の熱効率を直接改善する技術に焦点を絞り、SIP燃焼の成果をどう進化させようとしているかを概説する。