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米テスラ(Tesla)の「モデル3」が他の車両と圧倒的に違う点が分解で明らかになった。わずか数個のECU(電子制御ユニット)で、「走る」「曲がる」「止まる」の制御を完結させる。電子プラットフォーム(基盤)の中核となる統合ECUの処理チップは内製だ。自動車業界の常識を無視して開発した統合ECUは、Teslaの競争力の源泉になり始めている。

 「モデル3」のインスツルメントパネルの内側から“本丸”が姿を現した(図1)。米テスラ(Tesla)が独自開発した統合ECUだ。コンピューターの演算処理性能は144TOPS(毎秒144兆回)と高く、消費電力は72Wに上る。放熱対策として、高コストな水冷機構を備える。

図1 自動運転とインフォテイメントの機能を1台の統合ECUに集約
図1 自動運転とインフォテイメントの機能を1台の統合ECUに集約
モデル3の統合ECU「HW3.0」の内部基板の様子。それぞれの基板の裏面にも半導体が高密度実装されていた。HW3.0自体は、インスツルメントパネル内部の助手席側にあった。(撮影:日経Automotive、フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ)
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 このコンピューターの異質さは、トヨタ自動車や米ゼネラル・モーターズ(GM)などが2019年10月に立ち上げた、自動運転車向け車載コンピューターの推奨要件を定義するコンソーシアム「AVCC(Autonomous Vehicle Computing Consortium)」の取り組みと比較すると分かりやすい注1)

注1)AVCCの参画企業は2019年12月時点で、英アーム(Arm)、ドイツ・ボッシュ(Bosch)、同コンチネンタル(Continental)、デンソー、米ゼネラル・モーターズ(GM)、米エヌビディア(NVIDIA)、オランダNXPセミコンダクターズ(NXP Semiconductors)、ルネサスエレクトロニクス、トヨタ自動車、スウェーデン・ヴィオニア(Veoneer)の10社である。

 「2025年の量産車への搭載に間に合うように開発していきたい。安価な空冷システムにするためには、消費電力は30Wが限界だ」。こう語るのは、トヨタの代表としてAVCCを担当するトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)バイス・プレジデントの谷口覚氏である。

 谷口氏はさらに、「車載コンピューターは非競争領域でいいと思っている」と続ける。開発規模が非常に大きくなる中で、自動車メーカーごとに開発するのは非効率だと判断した。

 AVCCが示した自動車業界の常識的なロードマップや性能要件を完全に無視するTesla。自動運転用の車載コンピューターの内部にインフォテイメント用の基板も搭載し、統合ECUに仕立てた。

 分解を続けていくと、モデル3は「走る」「曲がる」「止まる」に関わる制御を統合ECUと3個のボディー系ECUのみで集中管理していることが分かった。この車載電子プラットフォーム(基盤)は「中央集中型」と呼ばれるもの。TeslaはECUの数を極端に減らし、競争力の源泉とする戦略を採った。

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