米テスラ(Tesla)が開発した自動運転用コンピューターの性能はどれほどか。実力を確かめるため、緊急自動ブレーキ機能を独自評価した。手動運転だけでなく、車速を自動調整するACCを作動させた条件も設定。ACC作動時は、テストドライバーが舌を巻くほど滑らかに減速した。
「あれ、ブレーキ踏みましたか?」。テストドライバーに確認してしまうほど自然に停止した。足がブレーキペダルに触れることなく、歩行者を模したダミーの約4m手前でクルマは動きを止めた。独自に実施したTesla「モデル3」の自動ブレーキ試験の一コマだ。
今回設定したのが、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を利用している状況での自動ブレーキ試験である。ACCは車速を維持したり、先行車と適切な車間距離を保って追従したりするもの。Teslaは運転支援システム「オートパイロット(Autopilot)」の機能の1つとしてACCを用意する。
比較のため、ACCをオフにして、運転者がアクセル/ブレーキペダルを操作して一定の車速を維持して衝突ターゲットに向けて進入する試験も実施した(図1、表)注1)。
車速 | 1回目 | 2回目 |
10km/h | × | × |
20km/h | △ | × |
30km/h | △ | ○ (ダミーの50cm 手前で停止) |
油断した運転者を守れるか
目の前の歩行者との衝突を回避しつつ、運転者を保護できるのか─。確認したかったのはこの点だ。Autopilotを作動させると、システムは積極的に運転を支援する。ここで問題になるのが、車両の制御をシステムに任せてしまう運転者が出てくることだ。
システムを信用しすぎて注意が散漫になった運転者に対して、Tesla車は警告を発して注意を促す。それでも、油断した運転者がとっさの危険を瞬時に察知してブレーキをかけるのは難しい。運転者の慢心による事故は既に何度も発生しており、社会の関心も高い。
その陰で、運転支援機能を巡るもう1つの観点として、運転者の保護という課題が浮上してきた。衝突の直前で緊急自動ブレーキを作動させると、運転者は身構えることができず、身体にダメージを負うことがあるからだ。
こうした課題は、時代が自動運転へと向かう中で日増しに大きくなるだろう。完全自動運転の実現を目指すTeslaは課題を認識し、対策を講じているのか。疑問を解消するため、ACCのオン/オフによって、歩行者との衝突を回避するための制御が異なるのかを実車試験で確認することにした。