「モデル3」のパワートレーンを分解して分かったのが、米テスラ(Tesla)の手堅さだった。他の自動車メーカーよりも先に一体型の駆動ユニットを採用しつつ、独自技術を盛り込んだ。インバーターや車載充電器はSiC(炭化ケイ素)パワー半導体をふんだんに使う。一方で、電池パックは“交換式”の理想を捨て、愚直に容量を増やす方向に舵(かじ)を切った。
「派手さはないが、2代目ということもあり洗練された仕上がりだ」―。モデル3の電動パワートレーンの分解に協力した技術者はこう評価した。
分解したモデル3は「Long Range」というグレードの車両。航続距離はWLTP(Worldwide harmonised Light vehicle Test Procedure)モードで560kmと長い。前後輪にモーターを1個ずつ配置する4輪駆動(4WD)車で、システムの最高出力は307kWで最大トルクは510N・mである。
モーターは、インバーターや減速機などと一体化した電動駆動モジュール「e-Axle」として車両に搭載していた(図1)。Teslaがe-Axleを使い始めたのは2012年に発売した高級セダン「モデルS」からで、他社よりも早かった注1)。
注1)ドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen)は、2019年11月に量産を始めた電気自動車(EV)「ID.3」にe-Axleを採用した。日産自動車やホンダなども、2020年以降に発売する計画のEVにe-Axleを搭載する計画である。
インバーターの質量を1/6に
今回、モデル3に搭載したe-Axleは、Teslaにとっては2代目となる。モーターとインバーター、減速機という基本構成は変えずに、小型軽量化と効率の向上を進めた。
大胆に刷新したのがインバーターだ(図2)。円筒形だったモデルSのインバーターは、減速機のカバーを含む質量が24.9kgと重かった。一方のモデル3のインバーターは3.9kgと軽い。体積も半減している。