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 小型軽量化できた要因の1つが、パワー半導体に電力損失が少ないSiC(炭化ケイ素)を採用したことだ。年産10万台を超える規模の量産車にSiCを採用したのはTeslaが初めてとなる注2)

注2)SiCパワー半導体を搭載した例としては、ホンダが2016年に発売した燃料電池車(FCV)「クラリティフューエルセル」があるが、生産台数は極めて少ない。トヨタ自動車は2020年からインバーターなどにSiCを適用していく方針だったが、十分な量のSiCウエハー(基板)を確保できないことなどを理由に見送った。

 Teslaは、モデルSではSi(シリコン)のIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を搭載していた。モデル3はトランジスタとダイオードの双方をSiCとしたフルSiC(オールSiC)のモジュールに変更した。

 インバーターに搭載したパワー半導体の数は、モデルSは96個だったものを、モデル3では20個未満に減らせた注3)。SiCモジュールは伊仏合弁STマイクロエレクトロニクス(STMicroelectronics)製である。

注3)正確には、前輪用のインバーターは17モジュール、後輪用のインバーターは18モジュールを実装しているとみられる。最大で24枚搭載できるようにしていた。

 インバーターにSiCパワー半導体を利用する上で欠かせないのが、放熱対策とコスト低減である。

 パワー半導体には大電流を流すため、水冷に放熱機構が必須になる。Teslaは今回、特殊な冷却フィンを用いた水冷機構を採用した(図3)。棒状のフィンに水を直接当てて冷却性能を強化した機構は、日産のEV「リーフ」も採用している。

図3 SiCモジュール向けの特殊な冷却フィン
図3 SiCモジュール向けの特殊な冷却フィン
モデル3のインバーターの水冷構造。冷却水を均一に分散させるために楕円形の冷却フィンを採用した。切削加工で削り出している。(撮影:日経Automotive)
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 モデル3で特殊なのがフィンの形状だ。「車載向けでは見たことがない」(ある部品メーカーのインバーター技術者)という、楕円形のフィンを採用した。楕円形にすることで、「冷却水を均一に分散させられるため効率的に放熱できる」(同技術者)という。

 SiCパワー半導体は、スイッチング損失が少ない利点がある一方で、ゲート電圧のサージ(急激な跳ね上がり)が発生するという課題がある。このため、低コストでサージを抑制することが求められる。

 モデル3は、「ソフトスイッチング」という方式を使ってサージを抑制した。同方式は、インバーターやDC-DCコンバーター回路中に、あえてインダクターやキャパシターを入れてその共振現象を積極的に利用し、穏やかに電圧と電流を遷移させるもの。直流の電源電圧を直接遮断・導通して交流化する「ハードスイッチング」方式に比べて、スイッチング時の損失を大幅に低減できる。