全4142文字
PR

“攻めた”電池セルの配置で密度向上

 電池交換システムに見切りをつけたTeslaは、EV業界の正攻法で航続距離を確保する道を選んだ。

 「かなり“攻めた”電池セルの敷き詰め方をしている」。モデル3の電池を分解した技術者はこう分析した。Teslaの“攻め”を確認できるのは、車両側面の補強部材であるサイドシルと電池パックの距離だ。サイドシルと電池パックを離すのは、側面衝突の際に電池パックに衝撃エネルギーを伝えないようにするためである。

 長さを測ったところ、モデル3は120mmしかなかった。ドイツAVLの調査によると、ドイツ・アウディ(Audi)のEV「e-tron」では同250mmだった注4)。中国のEVベンチャーである上海蔚来汽車(NIO)のSUV(多目的スポーツ車)「ES8」は同170mmである。

注4)AVLは、2019年10月下旬に千葉県浦安市で開催された自動車用電池のシンポジウム「Advanced Automotive Battery Conference Asia 2019(AABC Asia 2019)」で調査結果を発表した。

 Audiの半分以下の空間で電池パックを守るため、Teslaはサイドシルやセンターピラーなどに、引っ張り強さが980MPa級以上の高張力鋼板を採用した(Part5参照)。これにより、側面衝突時に電池パックや乗員室を変形させないようにした。

 モデル3の電池パックの質量は451.5kg。容量は75kWhなので、質量エネルギー密度は約166Wh/kgと計算できる。電池セルはパナソニック製の円筒形で、直径21mm×長さ70mmのいわゆる「2170」セルである。セル数は約4400本で、ここから4個の電池モジュールを組み、最終的に電池パックに仕上げる注5)

注5)モデルSとの比較でも、モデル3の進化がうかがえる。モデルSの電池パックの質量は586kgで、質量エネルギー密度は約145Wh/kgだった。電池セルはパナソニック製の円筒形。直径18mm×長さ65mmのいわゆる「18650」セルを、7000本近く搭載している。電池モジュールの数は16個。モデル3は電池セルを一回り大きくしつつモジュールの数を減らすことで、エネルギー密度を高めながら低コスト化を図った。

 e-tronの電池パックの質量エネルギー密度は「140Wh/kg程度」(AVL)。電池モジュールの数は36個と多く、その分モジュールのケースや補強部材が必要になる。Teslaのモデル3の方が、電池パックに占める電池セルの割合が高く、結果として高いエネルギー密度を実現できた。