ホンダ系のアクセル、ブレーキ、ステアリングの部品メーカーの統合が決まった。残された骨格部品や内装、ギア部品などのメーカーはCASE時代をどう乗り越えるのか。自社のコア技術に加え、ソフトウエアやAI・ロボットを駆使して生き残りを図る。各社の事業戦略を探ると、ホンダを主軸としながらも拡販にかじを切る動きが浮かび上がってきた。
中堅の部品メーカーの中にはCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリングサービス、電動化)時代に備えて、気を引き締める企業が少なくない。その背景には、成長できない部品メーカーは自動車メーカーから図面を受け取り、言われるままに部品を造るだけの企業になってしまいかねないという危機感がある。
ただ、フレームや足回り部品といったクルマの骨格を構成する部品、シートやギアといった機能の一部となる部品は、アクセルやブレーキ、ステアリングといったいわゆる基幹部品とは立場が異なる。CASEへの対応といっても、基幹部品のように自動運転などを見据えた統合制御を実現するためのソフトウエア開発ではなく、むしろ、ソフトウエアを活用した戦略が鍵を握る。
車両1台分の提案で勝負
ボディー系部品メーカーの多くは、生き残りの施策として車両1台分の提案を進めている。自社で扱う部品に限らず、周辺部品まで領域を拡大して開発の上流に食い込む。課題は、車両全体の衝突安全性能などをシミュレーションする解析能力を持つことと、自社が持たない部品や技術をどう手に入れるかにある。
骨格部品を手掛けるジーテクト注1)はその施策を急ぐ1社だ。自動車メーカーはCASE対応に人材や開発費をつぎ込まざるを得ない状態で、ボディー関連の開発に工数をかけにくい。ジーテクト社長の高尾直宏氏はそこにチャンスがあると見る。自動車メーカーの代わりに図面まで作成し、自動車メーカーの負荷軽減に寄与する。これが、選ばれる理由の1つとなる。
部品の領域を広げるといっても複数の部品を組み合わせたモジュールの提案では不十分な場合がある。ジーテクトはこれまで、ダッシュボードやサイドシル、フロアといった車体部品を個別に設計し、プレス製品として生産・納品してきた。部品単体の性能をシミュレーションソフトで解析したり、複数の部品を組み合わせたモジュール部品を提案したりもした。
だが、自動車メーカー側で他社の部品と組み合わせて衝突安全性能などをシミュレーションすると、「強度が足りない部分がある」とダメ出しをされることがあった。個々の部品の強度に問題がなくても、部品を組み合わせた状態では分からないからだ。
そこでジーテクトは、車両1台分のボディー関連部品を用意して、一体で提案する道を選ぶ(図1)。自社が持っていない部品や技術は、他社との協業や買収など様々な手を使い獲得する。衝突実験のシミュレーションなども一体で実施。自動車メーカーの業務を一部肩代わりすることで、開発上流への食い込みを狙う。
ジーテクトは、主要取引先であるホンダ以外の自動車メーカーに対しても、車両一体での提案を積極的に展開する。その対象は日系自動車メーカーだけでなく、欧州メーカーも視野に入れている。
とはいえ、欧州の自動車メーカーから受注を勝ち取るのは難しい。「技術力だけでなく実績が評価される傾向が強い」と高尾氏は述べる。そこでジーテクトは2015年、ドイツに拠点を設立。まずは既存の部品を武器に実績の積み上げを開始した注2)。
同社はさらに欧州での受注を拡大するために、エンジニアリング会社に協力を仰いだ。欧州メーカーの需要を的確に捉え、システム開発やモジュール設計などの開発の上流工程を担う体制を整える(図2)。