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ホンダ系の部品メーカーに比べると、トヨタや元日産系は早い時期から対策を始めている。ソフトウエアの活用をさらに進め、ハードウエアというよりはシステムとして次を提案する。成功の鍵を握るのは、個社の技術や事業にとらわれずに領域を超えることにある。CASE時代を生き抜くためには、グループ企業だけでなく他分野にも目を向けた“つながり”にありそうだ。

 部品メーカーの変革は、ホンダ系に比べるとトヨタ系や元日産系の企業がやや先行している。彼らが次の一手として繰り出すのは、ハードウエア単体の領域拡大はもちろんのこと、ハードとソフトウエアを組み合わせたシステム提案が目立つ。

 スイッチやシフトノブなどを手掛ける東海理化注1)は、開発の上流に食い込むことを目指したセンターコンソールが、トヨタ自動車「カローラスポーツ」で採用された(図1)。

注1)東海理化はスイッチやキーロック、シフトレバーなどの部品を手掛けるメーカー。売上高は5076億4500万円(2019年3月期)。従業員数は1万9390人 (2019年3月31日現在)。トヨタ自動車が株式を32.20%(2019年3月31日現在)を所有する関連会社。
図1 周辺部品を組み合わせて提案する(東海理化)
図1 周辺部品を組み合わせて提案する(東海理化)
部品単体での提案だけでなく、周辺部品を含めたモジュールでの提案に注力。2019年にトヨタ自動車が発売した「カローラスポーツ」で、シフトレバーを含むコンソールモジュールが採用された。(出所:トヨタ自動車)
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 同社の場合、従来はシフトノブを部品として提案して納品するのが多かった。だが、カローラスポーツではシフトレバーを含むセンター・コンソール・モジュールで、デザインを含めたモジュール案を作成。3Dデータを活用しながら提案したことが採用につながった。

 東海理化はこれを契機にトヨタが内製する業務の一部を受け持てるよう、デザインとスイッチ部品などを組み合わせたモジュール開発に力を入れる。

 同社の売り上げの半数近くを占めるスイッチ部品についても、モジュール提案をきっかけに、開発の上流に向かうよう力を注ぐ。CASE時代のスイッチ類は社内外とつながる機能を持つことで、大きな変革が求められるからだ。部品単体ではなく、デジタル化した機能を含めたHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)のモジュールとしての提案を狙う。

 例えば、ステアリングに配置したスイッチ。運転者の年齢やデジタル端末に対する習熟度などによって、表示や機能を変える(図2)。さらに、このスイッチが外部とつながる機能を活用すれば、利用頻度などをクラウドサーバーで集約して、状況に合わせてボタンの表示や機能を後から変更するといったことも可能になる。

図2 ユーザー層に合わせてメニューを表示(東海理化)
図2 ユーザー層に合わせてメニューを表示(東海理化)
スイッチ類を、単にデジタル化するのではなく外部システムと連携できるような設計を目指す。例えば、クラウド上のビッグデータと連携して機能をカスタマイズできるスイッチなどを提案する方針。ステアリングに搭載したスイッチをデジタル化し、シニア向け、エントリー向けなど、利用者に合わせた機能配置を提案する。(撮影:左下は日経Automotive、出所:画面の画像は東海理化)
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 ただ、コックピット周辺の部品をモジュールで提案していくにも、全ての要素技術を東海理化が持っているわけではない。例えば、スイッチに振動を伝えるためのモーター技術や、シートなどの技術も対象となる。同社は今後、他社との共同開発や協業といった連携を重視していく。

 東海理化はその模索を始めている。トヨタ紡織を中心に、アイシン精機、デンソー、豊田合成が連携したプロジェクトに参加し、未来の車室内空間「MX191」を提案した(図3)。

図3 未来の車室内を提案(トヨタ紡織、アイシン精機、デンソー、豊田合成、東海理化)
図3 未来の車室内を提案(トヨタ紡織、アイシン精機、デンソー、豊田合成、東海理化)
トヨタ紡織など5社が共同で提案する、自動運転のレベル3、4のクルマの車室内「MX191」。各社がスイッチやシートなど技術を持ち寄る。(出所:トヨタ紡織)
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