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自動車メーカーが新たなソフトウエア基盤として整備する“ビークルOS"は、高い処理性能を持つ統合ECU(電子制御ユニット)への搭載が前提になる。統合ECUでは、これまでのECUとはソフト開発の手法が異なり、IT業界の手法に近づく。ITの本場、米国シリコンバレー流のノウハウを取り入れる動きが始まっている。

 米国シリコンバレーに本社を置く新興電気自動車(EV)メーカーのテスラ(Tesla)は、2019年に中央処理型の統合ECU(電子制御ユニット)を採用した(図1)。自動車業界でこうしたECUの採用が本格化するのは2025年ごろと予想されており、テスラは6年も先行したことになる。

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図1 テスラ「モデル3」と統合ECU
(a)テスラのEV「モデル3」。(b)モデル3が搭載する統合ECUは、自動運転用とメディアコントロール用の2枚の基板を内蔵し、水冷方式を採用する。(撮影:日経BP テスラ分解調査チーム)

 ここへ来て、ドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen、VW)やトヨタ自動車も、統合ECUを前提とする“ビークルOS"の開発を加速している。VWは「vw.OS」の車載コンピューターとして、「HPC(High Performance Computer)」と呼ぶ統合ECUを、車両1台当たり3~5個搭載する計画である。

 とはいえ、統合ECUに対するVWやトヨタのアプローチは、テスラに比べると緩やかである。テスラは一気に中央処理型の統合ECUに移行する「破壊的アプローチ」、VWやトヨタは段階的にECUを統合する「持続的アプローチ」を採る。これには、過去のクルマ開発の歴史が関係している。