新型コロナウイルスのまん延が、自動車業界を直撃した。年間2000万台の新車需要が消失し、需要回復は2023年以降と長期化の様相を呈する。足元では厳しい状況が続いているが、変革を起こす好機と捉える企業も目立ち始めた。「アフターコロナ」の時代で勝ち抜くため、3つの変化に対応することが求められる。
「他社の多くが投資を抑制しているが、当社は逆を行く」。生産設備の増強を決めたのが、米Tesla(テスラ)CEO(最高経営責任者)のElon Musk(イーロン・マスク)氏だ。
「SDGs(持続可能な開発目標)に本気で取り組む」。トヨタ社長の豊田章男氏は2020年5月に開いた決算会見で、アフターコロナに向けた長期ビジョンを宣言した(別掲記事参照)。
「7月からはコロナの『コ』の字も言うな。大事なのは今後どうなるかを考えること。こんなチャンスはない」。日本電産会長兼CEOの永守重信氏は社内に発破を掛ける。
世界中にまん延した新型コロナウイルスによって、自動車業界の足元の状況は厳しい。それでも、感染症が収束した先のアフターコロナの時代を見据え、変革を起こす好機と捉える企業は取り組みを加速させる。
需要回復は2023年以降か
調査会社の英IHS Markit(IHSマークイット)は、20年の世界自動車販売台数が約7020万台になると予測する。年初予測から約21%下方修正し、2000万台近い需要が蒸発する可能性を示唆した。
さらに厄介なのが、新型コロナが自動車販売に与える影響が長期化する懸念があることだ。アーサー・ディ・リトル・ジャパン(ADL)は「現実的なシナリオでは、19年並みの年間9000万台規模まで回復するのは23年になる」(同社プリンシパルの濵田悠氏)と読む(図1)。
自動車メーカー以上に苦しいのが部品メーカーだ。日本自動車工業会(JAMA)理事・事務局長の矢野義博氏は「中小企業は7月以降に大きな影響が出てくる」と分析。高い技術力を持つ企業を守るため、JAMAは資金援助策を発足させた(別掲記事参照)。