人や地域を分断した新型コロナが、働き方やサプライチェーンを変え始めた。出社率を50%以下に抑える措置をとるなど、各社は在宅勤務を前提とした働き方を模索する。新規事業の芽を絶やさないようにするため、ホンダは伝統の「ワイガヤ」をオンライン化。 サプライチェーンは、「分散」をキーワードに感染症リスクを考慮した改善が始まった。
「時間と場所を共にしてお互いのアイデアを積み上げるブレーンストーミングができなくなった」(自動車メーカーの事業・商品企画担当者)―。日経Automotiveが実施したアンケートに寄せられた意見の1つだ。在宅勤務の難しさが浮き彫りになった。
そんな中で、いち早く動いたのがホンダだった。日本で緊急事態宣言が発令された翌週の2020年4月15日、同社は「ワイガヤ」をオンラインで実施した。しかも、参加人数は600人と大規模だ(図1)。「今後30年通用する新しい4輪事業のサービス」をテーマに、新入社員が5日間みっちり議論を重ねた。
課題やテーマを共有しながらざっくばらんに話し合うことで物事の本質を探し出すワイガヤ。その本家本元のホンダでワイガヤのオンライン化を主導した仲山修司氏(知的財産・標準化統括部標準化推進部先進事業知財課)は、「価値観が大きく変化するアフターコロナでは、変化に追従するためにワイガヤを実施し続けることが大切」と訴える。
以前の対面形式のワイガヤでは20人規模で膝を突き合わせていたが、オンライン会議ツールの「Zoom」を使ったオンラインシステムを構築した注1)。人が集まる「場」が必要ないことを逆手に、600人という大規模での開催を試した。基本的には4人1チームで議論を重ね、成果報告などいくつかのプログラムを全員参加とした注2)。
ホンダは、オンラインでのワイガヤの試行錯誤を続ける。20年7月には、対面の議論を組み合わせた“ハイブリッド型"で実施。まずオンラインで話し合い、その1週間後に試作品を囲んで議論した。
「対面にこだわる必要はない」。仲山氏はワイガヤのオンライン化の手ごたえを口にする。むしろ、「オンラインの方が場所の制約がなく集まりやすく、声の大きい人の意見だけに引っ張られないなど利点は多い」(同氏)という。議論を活性化するファシリテーターの介入方法などに改善の余地は残るが、「議論は対面で」という考えは先入観と捉えてよさそうだ。