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中核から外れるイメージセンサー

 Mobileyeがイメージセンサーの本格的な分業にかじを切る背景にあるのは、同センサーの性能が車載用途で十分な水準になってきたことがありそうだ。ON Semiconductorの小野科生氏は「(車載イメージセンサーは性能向上の)ゴールが近づいている」と見通す。

 例えばMobileyeがEyeQ4と組み合わせる830万画素のイメージセンサー「AR0820」。ダイナミックレンジは140dBと高く、自動運転用途でほとんど十分と言える水準に達する(図3)。21年以降に投入する次世代品は、画素数を1200万まで増やすもよう。加えてダイナミックレンジと相反しがちなLEDのフリッカー(ちらつき)対策などをさらに推し進める。自動運転用では、もう十分と言える性能に近づく。

図3 Mobileyeが開発する自動運転車
図3 Mobileyeが開発する自動運転車
イメージセンサーで基本的な自動運転を実現する。LIDARとミリ波レーダーで冗長系を構築する考え。(出所:Mobileye)
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 進化が激しい間は、センサーを頻繁に更新しなければ競争力を維持できず、認識ソフトの変更規模も多くなりがちだった。センサーを他社品に切り替える手間は大きく、分業しにくかった。ただ進化の速度が鈍れば、その逆。Mobileyeは、いよいよイメージセンサーを切り替えやすくなる時期が来たとみるのだろう。

 一方で進化の停滞は、センサーメーカーにとっては競争が激しくなり、あっという間にコストだけで比べられるコモディティー(汎用品)になりかねないことを意味する。イメージセンサー各社は、汎用品になる時代を見据えて、手掛ける領域を拡大し始めた。

 例えばMobileyeと似た方向を向き、自動運転ソフトの開発に着手したのがソニーである。映像処理や認識ソフトに強く、20年にレベル4を目指した自動運転車の試作車を開発した。

 一方でON Semiconductorはソニーと対照的に、ハードの強みを生かして戦線拡大する。自動運転センサーの「3種の神器」のうち、残るLIDARの受光部とミリ波レーダーのトランシーバーの開発に新たに着手した。「頭脳(自動運転ソフトなど)ではなく、CMOS技術の強みを生かしてデバイスに特化する」(小野氏)と、ソフト主導の時代にあえてハードの強みを生かす戦略で臨む。

 LIDARの受光部は順調に進んで21年後半、トランシーバーは21年内の量産を目指す。ともにイメージセンサーで培ったCMOS技術を生かし、コストを抑えつつ品質と性能を高める算段だ。特に自動運転に欠かせないLIDARは発展途上で、しばらく進化が続く。汎用品になるのはしばらく先だろう。

 LIDARの受光部の開発のため、18年にアイルランドSensL Technologiesを買収した。最近は高出力化して距離を長くできる1550
nm帯付近がよく使われるが、受光部は高価な化合物半導体のInGaAs(インジウム・ガリウム・ヒ素)が多い。ON Semiconductorは905nm帯を使うCMOSの受光部を開発し、安価にしつつ感度を高めて長い測定距離の実現を目指す。

 ミリ波レーダーについては、現在はSiGe基板を用いていたものを、Si基板のCMOS技術に切り替えていく。