ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)の新型電気自動車(EV)「ID.3」は、OTA(Over The Air)に対応した大規模な統合ECU(電子制御ユニット)を搭載する。そのソフトウエア開発は、600人が延べ200万時間を費やす大規模プロジェクトとなった。従来の開発手法が通用せず、IT分野のさまざまな知恵を活用することで乗り切ったという。
「複雑化するクルマのソフトウエア開発を乗り切るためには、新たな知恵が必要だ」。ドイツContinental(コンチネンタル)のソフト子会社、同Elektrobit(エレクトロビット)のExecutive Vice President Business Developmentであるマーティン・シュライヒャー(Martin Schleicher)氏はこう指摘する(図1)。
同社はドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)の新型電気自動車(EV)「ID.3」の統合ECU(電子制御ユニット)「ICAS1(In-Car Application Server 1)」のソフト開発を手掛けた(図2)。コンチネンタルとエレクトロビットを合わせて計600人のソフト技術者が延べ200万時間を費やして開発したという。
通常、ECUのソフト開発はアクチュエーター制御などの小規模プロジェクトなら約10人、車載情報システムやADAS(先進運転支援システム)といった大規模プロジェクトでも数百人であり、「600人という規模は初めて聞いた」(ECU開発者)との声もある。
ICAS1はコンチネンタルの統合ECU「ボディー系HPC」をベースとする(図3)。クラウドとの接続や、車載ネットワークのルーター機能を担う「コネクテッドゲートウエイ」と、車両のボディー制御機能を統合したECUである。従来のクラシックなECUと異なり、OTA(Over The Air)によるソフト更新にも対応するため、ソフト開発は車両の出荷後も続く。
ID.3はICAS1のほかに、「ICAS2」「ICAS3」と計3台の統合ECUを搭載する。ICAS2とICAS3の詳細は不明だが、前者がADASや自動運転、後者が統合コックピットやHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)を担うとみられる。エレクトロビットはICAS1やICAS3の開発に携わったが、ICAS1の開発だけでも前例のない複雑なプロジェクトだったとする。