自動車メーカーが「DevOps(デブオプス)」と呼ばれるソフトウエア開発手法に力を入れている。「トヨタ生産方式のソフト版」ともいえる取り組みで、“ソフト工場”などとも呼ばれる。IT分野で実績のある効率的なソフト開発手法を取り入れることで、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への対応力を高める。
「ソフトウエアファーストのものづくりに転換する」―。トヨタ自動車社長の豊田章男氏はソフト優先の考え方をこう表現する。同社は2018年以降、モビリティーカンパニーへの変革を掲げ、ソフト開発力を強化してきた。18年3月にトヨタ、デンソー、アイシン精機の共同出資で自動運転ソフトの開発を担うTRI-AD(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)を設立。TRI-ADは21年1月から持ち株会社のウーブン・プラネット・ホールディングス、事業会社のウーブン・コア、ウーブン・アルファ、投資ファンドのウーブン・キャピタルの4社態勢に移行した(図1)。
ウーブン・プラネットは、自動運転ソフトの開発や実装に加え、静岡県裾野市に建設する実験都市「Woven City(ウーブン・シティ)」や車載ソフトの開発環境「Arene(アリーン)」、地図生成技術「AMP(Automated Mapping Platform)」などを手がける。同社CEO(最高経営責任者)のジェームス・カフナー(James Kuffner)氏は「開発するソフトのうち、車載するのはごく一部にすぎず、開発やテストのためのツール群が9割を占める」と指摘する(図2)。このツール群こそが競争力の源泉であり、“ソフト工場"の屋台骨と考えられる。