米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)傘下の同Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス)と、車載OS(基本ソフト)「QNX」を手がけるカナダBlackBerry(ブラックベリー)は自動車用のデータ基盤「IVY(アイビー)」を共同開発する。リリース時期は明らかにしていないが、すでに複数の自動車メーカーや1次部品メーカー(ティア1)と議論しているという。
カナダBlackBerry(ブラックベリー)が米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)と共同開発する自動車用のデータ基盤(プラットフォーム)「IVY(アイビー)」とは、どのようなものなのか。ブラックベリーアジア太平洋地域担当 エンジニアリングサービス シニアディレクターのWeiyu Liang(ウェイユー・リアン)氏に話を聞いた(図1)。
クルマは多種多様なセンサーを搭載し、車内外のさまざまなデータを収集できるほか、コネクテッド機能を使ってクラウドとの連携も可能である。このため、車両データを活用したさまざまなサービスが期待されているものの、「実際にはクルマ特有の事情によってデータを収集・活用することが難しい」(同氏)という。
まず、クルマはハードやソフトが統一されていない。「1台の車両に100個ものECU(電子制御ユニット)やセンサーが載っている。それらはハードやソフト、ファームウエア、OSがバラバラで、カスタマイズされたものも多い。センサーが出力するデータの形式や、通信のインターフェース、プロトコルもバラバラである。このため、データを集めること自体が難しい」(同氏)とする。
データへのアクセス権限も限られている。安全性やセキュリティーなどの観点から、センサーにアクセスできる権限や、センサーデータを第三者に提供できる権限などは厳しく制限されている。権限を確保するためには、車載システムの企画・設計段階から、データ活用サービスを盛り込んでおく必要がある。しかし、そのサービスが市場のニーズに合うかどうかはやってみないと分からない面もある。「もしニーズに合わなかった場合、そこからサービスを作り直すのは非常に難しい」(同氏)。
さらに、クルマはスマホなどに比べてデータ端末(車両)の数が少ないという課題もある。「ユーザー数が少ないデータプラットフォームは、アプリやサービスの開発者にとっては魅力が薄い」(同氏)。