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2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指して世界が動き出した。自動車業界の動向に詳しいインテルの野辺継男氏は、国際的視点からの「産業競争力」と「エネルギー安全保障」の2つの議論が重要と説く。(聞き手=久米秀尚)

出所:ポルシェ
出所:ポルシェ
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日本政府は30年代半ばまでに全ての新車を脱エンジン車にする目標を掲げました。これに対して、日本自動車工業会(自工会)会長の豊田章男氏(トヨタ自動車社長)が「自動車業界のビジネスモデルが崩壊してしまう」との見解を示したのが大きな話題になりました。カーボンニュートラルの実現に向けて、電動化で注目すべきポイントはどこでしょうか。豊田氏が言うように、ハイブリッド車(HEV)も電動車の1つです。

 まず明確にしておきたいのは、政府が言っているのは、「30年代半ばまでに純粋にエンジンだけで走る自動車をゼロにする」ということです。つまり、HEVのようにモーターを搭載しているエンジン車は引き続き販売できるのです。今後の技術革新を考えれば、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)以外の自動車をHEVにするという考え方は十分妥当性があると考えます。

 明確にしておくべきことは、EV化のみでカーボンニュートラルが実現されるわけではないという点。カーボンニュートラルに向けて、自動車そのものの枠を超えたより広範な課題を議論する必要があります。

 自動車の生産には、EVもエンジン車も同様に電力を消費します。組み立て時のみならず、自動車を形成する鉄鋼やアルミニウム(Al)合金などのボディー材料、プラスチックやガラス、ゴムなどの内装・外装材、車両の電子化を支える半導体などの製造にも電力を使います。

 EVではさらに、電池の製造や電極材料のコバルト(Co)やニッケル(Ni)など採掘・精製する過程でも大量の電力を必要とします。走行時は電力で走るのでゼロエミッションとなりますが、その電力を生成する段階では化石燃料を燃やしています。EVのライフサイクルで莫大なCO2を排出するとすれば、EVの拡大が必ずしもCO2排出削減にはつながらないのです。ここが重要な論点になります。