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短い航続距離に長い充電時間など、課題が浮き彫りになる電気自動車(EV)。欠点を解消する手段として注目を集めているのが統合型の熱マネジメントシステムだ。米Tesla(テスラ)がいち早く実用化し、日欧の自動車メーカーが追いかける。熱を賢く操ることでEVの商品力を高めようと、開発競争が加速し始めた。

 テスラCEO(最高経営責任者)のElon Musk(イーロン・マスク)氏が、EV「モデルY」で「最も重要な部品の1つ」として挙げる部品がある。自動運転機能をつかさどる車載コンピューターでも、高容量なリチウムイオン電池でもない。

 マスク氏が「特にすごい」と語るのが、「Octovalve(オクトバルブ)」と名付けたEVの熱マネジメントシステムの“司令塔”だ(図1)。空調や電池、パワートレーン、車載コンピューターなど、冷却・加温が必要な部品の熱マネジメントを統合制御する部品である(Part2参照)。ある部品メーカーの熱技術者は「これほど複雑で賢いシステムは見たことがない」と舌を巻く。そして、「コストは100万円以上になる」と言葉を継ぐ。

図1 テスラ「モデルY」の熱マネジメントシステムの全体像
図1 テスラ「モデルY」の熱マネジメントシステムの全体像
空調やリチウムイオン電池、パワートレーン、ECU(電子制御ユニット)など、各部品を加温・冷却する回路はすべて“熱の司令塔”である「オクトバルブ」とつながっている。(出所:A2Mac1)
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 熱と向き合わなければ、EVの商品価値は高められない―。開発費を含めて多大なコストをかけてテスラが生み出したオクトバルブは、EV時代の競争軸を浮き彫りにする。

 エンジン車は、パワートレーンや空調など部品ごとの熱管理で十分だった。だが、熱源を持たないEVは「あらゆる部品から熱をかき集めて使い切らないと、EVの欠点を解消できない」(日産自動車のEV技術者)。電池やモーターなどを最適に温度管理しつつ、快適な空調を実現する統合型の熱マネジメントシステムが必要になるのだ。