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2035年までの新車の100%電動化―。それと共に軽自動車に重くのしかかるのが、30年度からの次期燃費基準だ。現状の軽自動車は簡易ハイブリッド車(MHEV)でも同基準には遠く及ばない。現状のMHEVを超える燃費改善効果の高い電動車が必要だ。実際、軽自動車メーカーの中にはそんな電動車の投入を明言するところも出始めてきた。

 35年までに乗用車の新車販売で電動車100%を実現できるように包括的な措置を講じる―。日本政府は、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の一環として、純エンジン乗用車の新車販売禁止に向けて動き始めた。これにより、登録車に比べて電動化が遅れていた軽自動車において、電動化は喫緊の課題として急浮上した。

 そんな軽自動車の電動化をさらに厳しいものとするのが、「乗用車の2030年度燃費基準」(企業別平均燃費基準方式、CAFE方式)の存在である。同基準は、乗用車の燃費を、16年度実績に対して32.4%改善することを要求する厳しいものだ。

 IHSマークイットでプリンシパルリサーチアナリストを務める波多野 通氏によれば、現行の軽自動車は、いずれも燃費が30年度の燃費基準よりも10%以上下回っている(図1)。登録車においても、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)といった現在の日本の燃費基準では対象外となっている車種を除くと、30年度の燃費基準を満たしているものは、トヨタ自動車と日産自動車とホンダの、一部のストロングハイブリッド車(ストロングHEV)に限られる。

図1 日本国内で販売されている現行車の燃費と2030年度燃費基準
図1 日本国内で販売されている現行車の燃費と2030年度燃費基準
HEVはハイブリッド車。国土交通省のデータを基にIHSマークイットがまとめたもの。
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 現在、軽自動車を開発しているのは、ホンダ、スズキ、ダイハツ工業、日産、三菱自動車の5社である(日産と三菱自動車は合弁会社のNMKVで軽自動車の企画とプロジェクトマネジメントを実施している)。このうち、軽自動車で電動車を市販しているのは、スズキ、日産、三菱自動車のみ(注1)。しかも、三菱自動車の軽商用バン「ミニキャブ・ミーブ」と既に生産を終了した「i-MiEV」(ただし、最終モデルは登録車枠)といった軽EVを除くと、いずれもMHEVだけで、ストロングHEVやPHEVは存在しない(図2)。

表 軽のMHEVの例
いずれもエンジン排気量は660ccで、前輪駆動(2WD)のモデルを比較している。車種の写真は、グレードが一致していないものもある。比較対象のガソリン車は、ワゴンRがFAグレード(2WD、無段変速機)、デイズとルークスがXグレード。SUVは多目的スポーツ車。(写真:各自動車メーカー)
表 軽のMHEVの例
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注1)超小型EVは除く。
(a)
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(b)
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図2 三菱自動車の「ミニキャブ・ミーブ」と「i-MiEV」
(a)ミニキャブ・ミーブ、(b)i-MiEV。i-MiEVは、既に生産を終了した最終モデル。当初軽EVだったが、最終モデルは衝突安全性への対応からサイズが大きくなり登録車となった。(写真:三菱自動車)

 ここで問題となってくるのが、MHEVは燃費の改善にそれほど寄与していないということだ。仮に、35年の電動化を満足させるためにMHEV化を強力に推進したとしても、登録車に比べて軽自動車の販売比率が高い自動車メーカーでは、30年度の燃費基準を達成することは難しいとみられる。

 すなわち、本格的なストロングHEV化やEV化、あるいは現状のMHEVよりも高い燃費改善率を期待できる進化版MHEVの開発、もしくは現状のMHEVと本格的なストロングHEVの中間的な電動化の、いずれか、または組み合わせが求められる。本特集では、そうした軽自動車のより本格的な電動化に向けた選択肢の中から、現実的なアプローチを探っていく注2)

注2)30年度燃費基準はCAFE方式であるため、登録車の販売比率が高い自動車メーカーは、登録車の燃費改善を推進して軽自動車の未達分をカバーする手もある。