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ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)が電動パワートレーンを刷新した。「ID.3」のシステムで目玉となるのは、同社初の統合型熱マネジメントシステムだ。電池パックも新型で、リサイクルしやすい設計を採用したことが判明した。同時に、2026年に量産する次世代車両に向けて改良すべき点も見えてきた。

 「1つ、2つ……、やっぱり8個ある」。今まで見たことのない、不思議な十字形の部品が8個並んでいた(図1)。分析の結果、この部品はID.3の統合型熱マネジメントシステムの中核部品であることが分かった。

図1 “VW版オクトバルブ”を搭載
図1 “VW版オクトバルブ”を搭載
ID.3のフロントフード下を占拠していた熱マネジメントシステム。目を引くのが、冷媒の流れを制御する膨張/遮断用のバルブだ。十字形の部品で、8個並んでいた。(撮影:日経Automotive)
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 床下に敷き詰められた電池は、非常に長い大判のラミネート型セルを採用した。分解を担当した電池技術者が「まるで板チョコのようだ」と驚くほどだ。

 目新しい部品を多く採用したID.3だが、電動パワートレーンの完成形はもう少し先。小型・軽量化やコスト低減の余地は多く、走行性能を高める伸びしろも残っていた。

「こなれていない」VWの熱システム

 電池やモーターなどを最適な温度に制御しつつ快適な空調を実現する統合型の熱システムへの関心が高まる中で、先頭を走るのが米Tesla(テスラ)である。空調や電池、パワートレーン、車載コンピューターなど、冷却・加温が必要な部品の熱マネジメントを統合制御するシステムを「モデルY」や「モデル3」に搭載した。その“司令塔”の役割を担う部品が「Octovalve(オクトバルブ)」だ。

 オクトバルブの内部には8つの流路がある。その名がラテン語で「8」を意味する「オクト」に由来するのはこのためだ。すべての冷却・加温の回路をオクトバルブとつなげ、熱を運ぶ冷却水(クーラント)が流れる経路を条件に応じて切り替える。