世界シェア2%未満の自動車メーカーであるマツダが、エンジンから軸足を移さない。この時代になぜ、直列6気筒(直6)エンジンを新開発する必要があったのか。キーワードは、「北米」「環境規制」「2030年以降」の3つだ。“マツダ地獄”と呼ばれた負の連鎖から正のスパイラルへの転換を模索する。
「大変革の時代に向けて、企業のあり方や生き様を示す序章として開発した」。こう力を込めるのは、マツダ専務執行役員で研究開発・コスト革新統括の廣瀬一郎氏だ。
電動化の波が押し寄せる中でマツダが開発したのが、直列6気筒(直6)エンジンやそれを縦置きするFR(前部エンジン・後輪駆動)プラットフォーム(PF)「ラージ」(以下、ラージPF)などである。2022年4月7日、ラージPFを初適用した新型SUV(多目的スポーツ車)「CX-60」の日本仕様車を公開した。
日本公開に先立つ同年3月下旬、マツダは報道関係者を山口県の「美祢自動車試験場」に招き入れた。テストコースにあったのはCX-60の試作車だ(図1)。同社初のプラグインハイブリッド車(PHEV)と、排気量3.3Lの直6ディーゼルエンジンを搭載する48Vマイルドハイブリッド車(簡易HEV)の2タイプを体験させた。