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日本の自動車アセスメントプログラム(JNCAP)における最新の予防安全性能評価の結果がまとまった。最新(2021年度)の結果を見ると、自動ブレーキの夜間性能などで海外のセンサーサプライヤーが存在感を示した。各社のシステムの性能差は縮まってきており、今後は交差点の右左折や出合い頭衝突への対応などが競争軸になる。各社がシステムの競争力を維持するには、センサーのコスト低減と性能向上の両立などが求められる。

 国土交通省と自動車事故対策機構(NASVA)が2022年5月に発表した日本の自動車アセスメントプログラム(JNCAP)の最新(2021年度)の安全性能評価結果から、自動ブレーキに関するいくつかのポイントが見えてきた。

 第1のポイントは、海外のセンサーサプライヤーが存在感を示したことである。試験条件が最も厳しい夜間歩行者を対象にした試験で、5社の8車種が最高点(満点、以下同じ)を獲得した。これらの車種はすべて、夜間歩行者を検知する主要センサーとして、海外サプライヤーのカメラを搭載している。

 第2のポイントは、最高点を獲得した5社のうち、SUBARU(スバル)とホンダがカメラのサプライヤーを変更したこと。第3のポイントは、日産自動車とトヨタ自動車が複数のサプライヤーからカメラを調達し、車種ごとにカメラを使い分けてサプライヤーを競わせていることだ。

 各社のシステムの性能差が縮まっていることが、第4のポイントである。最高点を獲得できなかった3車種(トヨタ自動車の中型車「カローラ/同ツーリング」とスズキの小型ミニバン「ソリオ/同バンディット」、ホンダの軽自動車「N-ONE」)の得点率(満点を100とした場合の比率)は97%を超えている()。

表 最新の夜間試験の結果(2021年度)
スバルやホンダなど5社の8車種が1位で並んだ。NASVAの発表データを基に日経Automotiveが作成。
表 最新の夜間試験の結果(2021年度)
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スバル、変更したステレオカメラで最高点

 最高点を獲得した8車種のうち、スバルの中型SUV(多目的スポーツ車)の「レガシィ アウトバック」(以下、アウトバック)は、同社の先進運転支援システム(ADAS)「新世代アイサイト」を搭載する。夜間歩行者を対象にした2020年度の自動ブレーキ試験で最高点を獲得した中型ステーションワゴン「レヴォーグ」と同じシステムである。スバル車は2年連続で最高点を獲得した。

 夜間歩行者を検知する主要センサーには、スウェーデンVeoneer(ヴィオニア)製のステレオカメラを使う。スバルは過去に日立Astemo(アステモ)のステレオカメラを使っていたが、新世代アイサイトではステレオカメラのサプライヤーをヴィオニアに替えた。同社のカメラは広角化しながら、夜間認識性能を高めたのが特徴である。夜間認識性能を高めるために、ハードウエアとソフトウエアを改良したことが高得点に寄与した。

 ハード面の改良ではまず、ダイナミックレンジを従来のカメラより数倍広くした。これにより、夜間の歩行者を検知しやすくなった。また、CMOSイメージセンサーの画素数を、従来の約120万画素から約230万画素に増やした。その結果、広く遠い範囲の対象物を検知しやすくした。さらに、画像処理チップの処理速度を、従来のカメラに比べて数倍以上速くした。従来はASIC(特定用途向けIC)を使っていたが、新型カメラでは米Xilinx(ザイリンクス)のFPGA(Field Programmable Gate Array)に変えた(図1)。

図1 スバルの「レガシィ アウトバック」
図1 スバルの「レガシィ アウトバック」
夜間歩行者の検知には、主にヴィオニアのステレオカメラを使う。ハードウエアとソフトウエアを改良して夜間性能を高めた。スバルの写真を基に日経Automotiveが作成。
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 ソフト面の改良では、夜間にカメラで捉えた対象物が歩行者であると正確に識別するために、新たなアルゴリズムを追加した。また、認識精度を高めるために、機械学習を認識処理プロセスに適用した。