パワートレーンの電動化やバイワイヤ化と相まって、車両運動制御が高度化しつつある。そのけん引役となっているのが電動四輪駆動(4WD)システムだ。前後のモーターとブレーキなどを協調制御することで快適性が高まってきている。そうした走りの進化が新たな訴求点になる可能性を秘める。
カーブ手前の減速で前のめりになるようなピッチング(車両が前傾や後傾になったりする回転運動)が大きく抑えられ、修正操舵(そうだ)も減る。アンダーステア(コーナリングで狙ったラインよりも外側に膨らんでしまう現象)に陥りにくく、コーナリングの安定感も高い。日産自動車の新型SUV(多目的スポーツ車)「エクストレイル」の電動4WD車に試乗し、ワインディングロードや高速道路、市街地を走行したときの印象だ(図1)。
これを可能としたのが、電動4WDシステム「e-4ORCE」と、その特性を引き出すブレーキとモーターの協調制御だ(図2)。従来は独立させていた横滑り防止装置(ESC)による油圧ブレーキの制御と、モーターによるトルクや回生ブレーキの制御を統合した。
すなわち、車両運動の統合制御の高度化が、パワートレーンの電動化やバイワイヤ化の進展と相まって、より安定で安心・快適な走りを可能にした。
ESCは、常用のサービスブレーキ(運転者がペダルを踏むことで作動するブレーキ)ほどの制動力は出せない。だが、サービスブレーキとは独立に油圧を作り出し、それぞれの車輪に供給する油圧を個別に制御できる。言い換えれば、ブレーキペダルとは切り離されたバイワイヤでありながら、四輪を独立に制御可能なブレーキとして活用できる。